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カテゴリ:恋愛小説
「あなたの記憶がどこまでを覚えていて、
どこからを忘れたのかは私にはわからないけれど…」 そう言って彼女は語ってくれた。 私が覚えていないイヤなこと。 それはきっと彼に片思いをしていた女の子のことだと思う、って。 いつも彼のことを見ていたその子は 彼が私のことを好きだったこと気付いていて 何かとつらくあたっていたそうだ。 彼女はクラスのリーダー的存在の女の子だったから 他の友達も巻き込んだりして。 私はそんな悪意にはあまり気が付いていなかったけれど。 あの日、 彼にもらったラブレターを 「記憶を戻すきっかけになるかもしれないから」と 手渡すように言われ、私は素直に手紙を渡した。 彼がくれた彼の言葉。 もしかしたら私のことを思い出してくれるかもしれない。 自分で会いに行くべきだとも思ったけれど 彼とはなんとなく顔が合わせずらかった。 その手紙がびりびりに破かれて捨てられたことに気が付いたのは たまたま次の日私と友人が掃除のゴミ捨て当番だったから。 彼女の話しでは私は怒りも泣きもせず その紙片に触れることはせず ただしばらく呆然として、そして目を伏せて帰って行ってしまったらしい。 私が覚えているオレンジの夕焼けの校庭は きっとその日のものなのだろう。 結局真っ直ぐ家に帰る気になれなかった私は なんとなくふらふらと バスケットボールの試合が行われたコートに行って タイヤの遊具に座ってそれを眺めた。 夕日のオレンジがまるでバスケットボールみたいだな、 って思った。 そうしてやっと その頃の彼の顔を思い出した私は 彼の元に駆け出した。 (続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/10/27 12:23:33 AM
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