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カテゴリ:母
今日は、母の命日だ。
病院に駆けつけた私を待ちわびていた母は、 苦しい息をしながら、明日は貴女の誕生日ねと言う。 そして、誕生の時の詳しい話や、命名の由来などを たのしそうに話してくれた。そして、 ♪ ハッピーバースディトゥーユー♪ の歌を 歌ってくれた。 その時はもう、ほんとうに苦しそうだったのに… そして、一度だけ、 くるしい…と小さい声でつぶやいた。 それなのに、「あのね、このくらいじゃあ死ねないのよ」 と、冗談を言った。夜は、入れ歯をはずして、 クスリの液にいれて、眠った。 気丈な母だ。 次の日の朝 あまりの苦しさに 「今日は死ねそうだ」と小さくつぶやいた。そして、 夕方義姉に入れ歯をちゃんと入れてちょうだいと 頼んではめてもらっていた。母はベッドのパイプを しっかりにぎりしめて目をつむっていた。 今、こうして書いていると、母は 勇躍して死に立ち向かっているようだった。 私の59才の誕生日に88才で死んだ母。 バトンタッチされた母の人生のつづきを、私は生きたいと思う。 それが母の願いかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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