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カテゴリ:中学生時代
田舎の中学に入学した時、東京から3年生の転校生が一人来た。
半世紀以上も前は、 そこはまだ田んぼと畑の広がったのどかな田舎だったから、 東京からやってきた中学生はソフィスティケイトで、かっこよく、 その上、頭が良くって、ルックスもよかったから、 ぴっかぴかに光って注目の的だった。 生徒間でひそひそと評判となって生徒会長選出の候補に押された。 体育館に全校生徒が集められ、立候補した人が、順番に演説をした。 昔は皆、真剣そのもので、口角泡をとばして、 りっぱな正々堂々の選挙演説をするのだった。 最後に湯川さん(仮名)が立った。 そして、前代未聞の演説をした。 ふらりとマイクの前に立つと、普通の声で、 「湯川です。もし、僕が良いと思う人がいたら、入れてください」 たったひと言、そう言っただけだった 。 そして壇上をすとんと降りた。し~~~んとなった。 先生方は苦虫をかみつぶす気持ちではなかったか?あの古い時代。 こんなに大切な真面目な全校生徒の大会を、 そんな風に、生意気な、一見ふてくされたような、 いいかげんとも取れる態度ですますなんて、 東京人は、我々を馬鹿にしてる、 とでも思われたに違いないと思う。 しかし、生徒の反応は違った。 きゃ=====!!かっこいい~~~~~~~~~~~~!!!! 田舎の真面目な生徒達は、生まれて初めて衝撃的にかっこいい人に 出会ったのだ。 頭も良くって真面目なのに、ちょっと斜めの人あたり、何気ないそぶり。 かっこよくてかっこよくてたまらない。 ダントツの票が入って湯川さんは、生徒会長に選ばれた。 今は、東京で弁護士をしているらしい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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