姪が婚約をした時のこと。
相手の男性は、いわゆる3高で、目から鼻にぬける男子。
その上性格は、温かく、皆の人気者で、仲間のリーダーだった。
私の次女が、結婚の相手を探しているときには、そんなステキな男子を
紹介してくれなかった親類をうらめしくさえ思ったくらいだ。
幸せな結婚式。
ところが、しばらくして、二人がうまく行ってない様だとのうわさ。
姪の母親が心配して、私の母に何度か相談に来ていたが、
若い人は、なかなか親の言うことは聞かないもので、
どうしても別れるというのだった。
私の母は、頼りになる女性だったので、
ふたりをもとの鞘に戻してやって欲しい、これが最後と、
姪の母親は、頼み込んで来た。
母は、二人を呼んだ。
山のように、悪口を言い合う二人。
別れる決心は、固かった。
ところが、母は、お別れパーティーをしましょうと言った。
最後においしいものを取って、飲みましょうというのだ。
両家の皆さんは、皆、驚いたが、
母がぽんとお金を出したので、成り行きで、では、飲みましょう
ということになった。
二人は目も合わさず、はしっこと、はしっこに別れて座った。
そして、数時間。
飲みつかれて、姪の母などは、その場で、座布団を枕に、
うたた寝をし、皆さんも、三々五々帰って行った。
母も、疲れてベッドに入った。
ところが、真夜中、二人が私の母を起こして、
もう一度やりなおすと告げたのだ。
姪の母は、それを知らずに、起きあがって、
「じゃあ、駅まで、送っていくね~ 」と、ねぼけ声で言った。
ほんとうに、誰もが、狐につままれたようだった。
一体何が起きたのか?
皆が酔いつぶれたころ、二人はもう一度話し合ったのだそうだ。
今は、かわいい子供も授かり、仲良く暮らしている。
あの時、母は、
「こういう時は、ごちそうを食べるといいのよ」と、目くばせしてみせた。
母が、私に教えてくれた事、たとえば、人に何かを送るとき、
「そこに、ちょっとお菓子なんかを一緒に入れること。
そうすると、心も、目も、口もうれしいのよ」と。
私は、今もそれを実行している。 出来ない時もあるけど。