1960年頃、母がふと、
大粒の真珠の指輪がほしいな~と、つぶやいた。
それを耳にして、心の中で、母にきっと買ってあげようと心に決めた。
でも、数年して、両親が、ハワイに行くこととなり、
友人一同から、すてきに大きな粒の真珠を頂いたと、知らされたので、
私の親孝行の目標が無くなっていた。
母が、80才の頃だった、
つれづれに昔、
母の友人が持っていたという黒の真珠の指輪の話になって、
そのデザインは、篭のような物に黒真珠が、収まっているところが、
すてきだったという事を、私に言った。
その時、
いつまでもお洒落な母の目が、夢みている様だったので、
よし、いつか母にそんな黒い真珠の指輪を買ってあげよう、と
また、心に目標ができたので、うれしかった。
ある日、友人にそんな話をふと、漏らしたところ、
知り合いの質流れ品を扱う業者さんに聞いてくれたらしい。
そういう、親孝行な気持ちに感激したから、
大きな黒の真珠をダイアが取り巻いている上等があるから
30万円で、どう?と言ってきたので、見もしないで
すぐ買って、母にプレゼントした。おそらく200万円以上すると思われる。
でっかい体格のアラブの金持ちがしそうな、その豪華な指輪は、
母の細いしなびた指には、大きすぎて、派手過ぎて、
全く、似合わなかった。
私は、しまった!!という気持ちは否めなかった。
母の指には、何も飾りの無い、
ぽつんとひとつぶの真珠がよかった。
おそらくは母も、私も、そう思ったが、二人とも口には出さなかった。