母の亡くなる3年前だった。
長男が、(私の兄)新しいマンションに引っ越すことになった。
体の弱ってきた母も、長男と同居を決めたので、私が、母の家を
片付けに行った。80数年間の荷物の山は、
これからの生活スペースに納まらない。
新しい、たった3畳の倉庫に入る物は限られる。
気丈な母は「見ればおしみがかかる、見ない間に全部捨てよ」と
私に処分をまかせた。夫に1ヶ月くらいの期間をもらって、
一人で母の荷物を何もかも捨てる判断をした。両親の思い出の写真が
大きな茶箱に5個。全部捨てた。長年お稽古した花器類が
100個以上あったし、茶道具もしかりだ。父があんなに大切にしていた
壁面いっぱいの書籍も一冊も残さず捨てた。
和服だけは、母の命だったから、母の気持ちを汲んで、
お世話になった人にすべて送った。
始めは、トラック2台分を、お金を出して捨てたが、
後は、私も力尽きて、家と共に壊して一緒に捨ててもらった。
自分は、精神的にも、体力的にも、あまりにもつらかったから、
ひとつの教訓を得た。
(自分が死んでから子供達に迷惑のかからないよう、まだ元気なうちに
身辺をかたずけて、シンプルにしておかないといけないぞ)
ということだ。
その後、自分自身もばりばり捨てた。私はまだまだ元気いっぱいの
お婆ちゃんなのだが、今しかないだろう。先日も歩きすぎて、
4日後に膝が激痛を起こした。いつ、動けない体になるやも知れない。
荷物を片付ける為にはちょうど良い年代なのだ。
私は、顔に似合わずお裁縫が大好きだ。いつもあちこちで買い求めた
美しい布裂たちは、同じ趣味の女性にあげた。すごく大きな段ボール
5箱もあったなぁ。
60年間集めたファッションアクセサリー、全部婦人会のバザーに
寄付。さっぱりした。
それでも、なかなか捨てられないものもあってねえ...さりとて、
お墓に持っていける訳も無し...
子供達に迷惑のかからない程度には、無に近づけたいと思う
今日このごろだ。