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カテゴリ:お洒落
姉とふたりで、父に長髪をすすめて、やっと、
伸ばしてもらった。 ゆるいパーマをかけて、オールバックにしてもらった。 上背もあったし、ちょっとかっこよかった。 父は、いやだいやだと言いながらも、 若い、新しい生き方をしたいという思いもあって、 私達2人の、(かわいい娘の?)言葉についその気になって、 髪を伸ばしはじめたのだ。すると、 若い部下達にちょっとお世辞なども言われたと見え、 いやいやながらも、 ま、いいかな?という感じで、父は、髪を整えていた。 ある日、 父は、親友から、さそわれて10人ほどで飲んでいた時だった。 向こうのテーブルから、笑い声が聞こえた。 「いい年をして、髪なんか伸ばして、いい気になってる奴がいるよ~」 それは、 親友の酔った声だった。 父は、 数日後、理髪店に行き、元の短髪にもどった。 だからと言って、男2人の友情に、変化は起こらなかった。 父は、ロングヘアにしていることが、やはり少し恥ずかしかった。 でも、私のような娘や、部下のお世辞で、 少し勇気を出して、長髪にしていたのだったが、 明治男の、じくぢたる思いもあった。 そして、その、大向こうから聞こえたあざけりの声に、 すぐ、我に返ったのだった。 それを知って、私は、ちょっと残念だった。 しかし、 今この記事を書きながら、思った。 父の親友という男性は、父より100倍もお金持ちで、 ダンディーを絵に描いたような男だった。 いつも、洒落っ気の全く無い、朴念仁の父に、 お洒落や、粋人のアドバイスをするほどの人間だった。 しかし、そのダンディーな男に、 たったひとつ、無いものがあった。 娘と息子を持てなかった。 だから、 私達娘が成長して、父にお洒落を教えてあげるようになって、 彼は父を見て、「おや?」と思っただろう。 あるとき、 その胸のハンカチとネクタイのコンビネーションがいいね~と 彼が褒めた時、父は 「いやいや、娘らが、よってたかって。 わしは、着せ替え人形みたいなもんです」と、 照れて、答えたという。 親友は、ほんの少~~し、焼き餅を焼いていたのかもしれないね? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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