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カテゴリ:母
いつもは微妙にお盆をはずして帰省する次女一家が
お盆にやって来ることになった。 私が、元気いっぱいだった頃は、 たった一日で、準備をしたものだが、 今では体にダメージを負わないように、 少しずつ少しずつ、始めている。 普段、全然使わない部屋に殺虫剤を撒いて、 戸を閉め切って2晩ダニを殺して、 次ぎの日は、掃除機をかけて、畳を全部拭く。 次の日は、布団を出してドライをかけた部屋で3日ほど干す カバーを洗濯しておく。 すると、家中を掃除したくなって来る。 本棚から、押し入れから、戸棚から、毎日毎日掃除しまくりの日々。 今日も、いつも開けない引き出しにまで手を広げてしまう。 その中に、 母の形見の袋があったのでちょっと見たくなった。 雑巾を放り出して座り込む。 箱の中の、スイス製の、古い小さな金の腕時計。 ほんとうに小さな腕時計だ。 母は私よりも背が高かったが、 若いころは細っそりしていたので、 腕時計のベルトの金色の蛇腹が、ひどく小さい。 文字盤の部分も1センチ四角の小さな物だ。 この時計は、 私が小学生の頃、母が腕にしていた。 そんな昔々のスイスの時計。 時代が変わって、新しい物がどんどん出て この腕時計は、なじまなくなったのだろう。 しまい込んだまま50年ほど経ったのだろうか。 母の宝石類の形見分けの時 こんな古いものは誰ももらわないだろうからと、 私が持っていた。 今の女性は、腕時計をはめる時は 男性と同じように、 手首の甲側に文字盤がくるようにはめて、 時計を見る時は 肘をぐいと張って、時間を見るが、 昔の日本の女性は、 時計の文字盤が、手首の内側に来るようにはめたものです。 そして、肘を張らずに そっとうつむいて、しとやかに時刻を見た。 私は懐かしく、そんなポーズの母の面影を想った。 ネジを試しに巻いて、耳に時計を当ててみると 小さな音がかすかに チチチチチチ……………………… 動いてる!! 母がここに来たような気がした。 「おかあさん」小さな声で呼んだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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