国が計算する国民医療費って何?:国民(患者)が実際に支払った金額とは違うようだ
ひっさしぶりに真面目なことを書きたいと思う。つまらなかったらごめんなさい(苦笑)。今朝の日経新聞(第5面)には厚生労働省が昨日の8月23日に発表した2003年度における国民医療費の概況が載っていた。その総額、なんと31兆5,375億円だそうだ。単純に比較できるものではないが、例えば外食産業の市場規模が25兆5,749億円、ホテル・リゾート業界の市場規模が1兆0,180億円と言われてるから、国民医療費市場が非常に大きいこともわかる。(これらの市場規模の出展はこちらから)総医療費のうち、65歳以上の高齢者の医療費が全体の50.4%を占める。年を取れば医療費がかかるというのはしょうがないことであろうが、医療費総額の半分以上が高齢者によるものだという数字を見るにつけ、進行する少子高齢化が大変なものなのだと再認識させられる。この記事では医療費の大まかな内訳も掲載されていた。入院医療費:11兆7,231億円外来医療費:12兆3,700億円調剤医療費:3兆8,907億円なるほどー、この3つが主要な医療費なんだな。でも待てよ、合計しても約28兆円ということは、まだ約3兆5,000億円も他の要素があるということだ。ホテル・リゾート産業3つ分の規模が不明のままでは嫌だったので、この新聞記事を手がかりに、厚生労働省のホームページに掲載された情報源、『平成15年度国民医療費の概況』をチェックしてみた。答えは「4 診療種類別国民医療費」にあった。歯科診療医療費 :2兆5,375億円入院時食事医療費:9,815億円 訪問看護医療費 :348億円この3点を加えれば合計の31兆5,375億円になる。歯医者ってのは別計算なんだな。おいしくないという定評の高い(苦笑)、病院での食事にも医療保険は適用されているのだ。訪問看護医療費については、2000年の介護保険実施に伴い、介護保険適用の部分が発生したため、医療費としての総額は減少したわけである。こうして国民医療費の内訳が全て明らかになって胸がスッキリした。でもまだ気にかかることがある。入院した時に発生することのある差額ベッド代は全体でどれくらいあるのだろう?風邪をひいたときにドラッグストアで購入する風邪薬などの大衆薬はどれくらいの額が消費されているのだろうか?さらに健康診断とか人間ドックは?つまり、厚生労働省が定義する「国民医療費」とは医療保険の適用部分しか見ていないのだ。しかし、国民が実際に医療費として支払った金額というのはこの辺も含めるべきではないだろうか。というわけで今度は広く医療費の総計を扱った資料はないかとネットの世界をさまよってみた。なかなか難しい(苦笑)・・・。やっとのことで狙いのページがヒット!これまた日経関連のサイト、NIKKEI NETの記事、「総医療支出、政府統計より4兆円多く・98年度」である。98年当時の情報であるからちと古いが、知りたかったエッセンスを含んでいる。要約すれば、98年に政府が発表した国民医療費は29兆8,000億円であったが、差額ベッド代、大衆薬購入費のほか正常な出産費用、歯科の自由診療、健康診断・人間ドックなど保険が利かない費用を考慮に入れた医療経済研究機構の推計によれば、政府統計より4兆7,000億円多い34兆5,000億円に達したというのである。先ほど疑問に思っていた部分の追加分はこんな感じである。差額ベッド代: 3,828億円大衆薬購入費: 9,027億円健診・人間ドック費: 9,764億円お、大きいじゃないですか(汗)。「国民医療費」とは何なんだろう。「医療費の抑制」という新聞を賑わせる表現は何を意味するのだろう。医療費を負担する国民の視点ではなく、国家財政を切り盛りする政府の視点で計算、想定されていないだろうか。1つの新聞記事からそんなことを考えさせられたのであった。