長江下游の雪③
【南京城壁修復事業(4)】今回目的の南京城壁修復事業は、1995年から始められた。折しも、第2次世界大戦終結50周年の年である。日本と中国の関係について、正しい歴史の認識のうえに、二度と不幸な歴史を繰り返さないという不戦の誓いを、戦争を知らない第3世代の人達の時代に、日中15年戦争の事実を通して歴史的にしっかりと伝えていく。これを起点に、戦後50周年の日中友好事業として、ユネスコに提出された遺跡保存修復案件に位置づけられた南京城壁の修復計画に対する協力が始められた。「日中両国民の各世代が、現地での作業に参加し、戦争が残した心の傷を建設的に埋めることによって、戦後50年の象徴的な事業とする」というのは、平山郁夫氏(日中友好協会会長)の言だが、私たちも、その最終年にこの事業に参加できたことは、たいへん光栄なことだと思う。南京市文物局では、1994年から2000年までに、城壁の延べ20km余りに渡る部分についての修復工事を計画している。このうち特に空洞や崩壊、亀裂が生じ、あるいは風化し砂状化している部分について、新たにレンガを積み、固め、防水・排水処理を講じ、城壁の周囲に緑地帯をつくる計画があるという。この計画のうち、「日本委員会」が協力するのは、 台城・玄武門の区間 - 1,505m(1995年) 玄武門・和平門の区間 - 2,413m(1996年) 太平門・中山門の区間 - 3,796m(1997年)全体で、合計20,488mである。今回の作業は、玄武湖の辺にある玄武門(?)での溝の清掃作業だった。タオル、軍手、帽子を手渡され、それぞれスコップを手にしての作業。町内掃除は罰金で逃れられるが、ここは友好活動。みなさん快く30分程度の作業を行っていただいた。両国の国民が、小さな作業ではあっても一つの目的を行うというのは、貴重なことだと思う。ささやかな行動が、友好の輪となっていくことを期待したい。