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2008年04月09日
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カテゴリ:畠中恵
『ちんぷんかん』読み終わりました。
これは『しゃばけ』シリーズの最新刊。

めちゃめちゃ体が弱くて、しょっちゅう死にかけている
廻船問屋兼薬種問屋、長崎屋の若だんな一太郎が主人公。
この一太郎は大店の跡取息子だけど、その立場に奢ることなく
思いやりのある優しい青年。
齢三千年の妖(あやかし)である祖母の血を引くため、
普通の人間には見えない妖の姿を見ることができる。

常に一太郎の身を案じ、尋常でないくらい
息子を甘やかす父藤兵衛・母おたえ(人間と妖のハーフ)、
一太郎の他には大事なものなどありはしないという
手代の仁吉・佐助(共に正体は妖)、
一太郎の腹違いの兄である優しい松之助、
一太郎の親友である、近所の菓子屋三春屋の息子栄吉、
小鬼の姿をした鳴家(やなり)・屏風のぞきなど、
様々な人や妖と一太郎を巡り、色々な出来事が起きる。

今回は5編の連作集ですが、全編を通して、
松之助の縁談の行方が描かれています。


『鬼と小鬼』

しょっぱなから、若だんな、死にかけちゃいます(笑)

通町界隈が火事になり、長崎屋にも火の手が移り、
逃げ遅れてひどく煙を吸ってしまった若だんな。
ふと気付くと2匹の鳴家・お獅子と共に三途の川の前に立っていた。
どうにか鳴家とお獅子だけでも元の世界に戻してやりたいと、
賽の河原で出会った子供、冬吉と共に冥界からの脱出を試みる。
どうにか追っての鬼を振り切り、現世に戻ってこれた若だんな達。
結局、若だんなを救ったのは、仁吉特製の死ぬ程苦いお薬でした。

現世のいつかどこかで、また冬吉と会えるといいね(⌒-⌒)
 

『ちんぷんかん』

妖退治で高名な広徳寺の寛朝様と、弟子の秋英さんのお話。

高い能力をもっているのになぜかインチキ臭く見える寛朝様と、
妖を見ることができるという自分の能力に全く気付いていない秋英さん、
どちらもなかなかナイスキャラです。



『男ぶり』

若だんなの母、おたえさんの若かりし頃のお話。

数ある縁談相手の中で、おたえが密かに心を寄せている辰二郎。
その叔父の家、水口屋では家中のあちこちから卵が出現するという、
不可思議な出来事にみまわれていた。
辰二郎とおたえ、そしておたえに対抗意識を燃やし、
辰二郎に横恋慕するお香奈も加わり謎を探っていく。

当時長崎屋の手代だった藤兵衛とお嬢様であるおたえが
結婚するに至ったエピソードが描かれています。



『今昔』

若だんながいきなり白い和紙に襲われた。
窮地を救ってくれた貧乏神の金次によれば、
この和紙は陰陽師が使役した式神とのこと。
大事な若だんなが狙われたとあって、仁吉&佐助は大激怒。
やっきになって陰陽師の正体をつきとめようとします。

今回も貧乏神の金次がいい味だしてます。



『はるがいくよ』

長崎屋の中庭に、通町の火事で焼け残った桜の古木が植えられた。
花が開く頃、突然現れた赤ん坊の正体は、
長い年月を経て妖となった桜の、花びらだった。

小紅と名づけられた桜の花びらの化身の赤ん坊は、
みるみるうちに成長していき、やがて美しい娘に。
桜の花の終わりとともに、小紅との別れが来ることを予感した若だんな。

同じ頃、兄の松之助は紆余曲折を経て思う相手との縁談が決まり、
長崎屋を出て分家することになった、
そして、親友の栄吉は家業の菓子屋を継ぐため、修行に出ることになった

行ってしまう者と残される者。
残される身となってしまう自分を嘆く若だんな。
それを複雑な思いで見守る、仁吉と佐助。

小紅は桜が咲いているほんの短い間しか、生きられない。
松之助と栄吉との別れを寂しく思う若だんなは、
せめて小紅だけは自分の元に留めたいと思い、
どうにかして桜の花が散らないようにできないかと思案する。

けれど若だんなは、ふと気付く。
人としての寿命しか持たない若だんなは、
何千年もの時を生きる、妖である仁吉と佐助にとって、
ほんの短い間しか生きることができない、
小紅と同じような存在であるということを…。

なんだか、いつもよりちょっと切ない気分になるラストでした。





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最終更新日  2008年04月23日 13時11分54秒
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