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2008年05月23日
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カテゴリ:か行の作家
 映画篇.jpg

物語の力が弾ける傑作!!
笑いと感動で胸が温かくなる傑作ぞろいの作品集。
『ローマの休日』『太陽がいっぱい』など不朽の名作をモチーフに、
映画がきっかけで出会った人々の友情や愛を描く。
                      (Amazonより)



金城さんの映画への愛情がひしひしと伝わってくる作品です。


太陽がいっぱい
 毎日のように映画館に通い詰めるほどの映画好きだった
 在日朝鮮人の二人の少年。
 親友同士だった二人の距離が少しづつ離れていき、
 やがて一人は小説家に、一人は裏の世界の住人へと、
 人生が分かれていく様がせつなく描かれている。
 
ドラゴン怒りの鉄拳
 暗闇の中で、自殺した夫の『赤く光る目』を見てしまったために
 トラウマ抱え続ける女性と、レンタルビデオ店《ヒルツ》で働く
 心優しい青年との交流。

恋のためらいフランキーとジョニー もしくはトゥルー・ロマンス
 家にも学校にも居場所を見つけることができない少女と、
 深く重い悩みを抱える少年が企てる、3000万円強奪計画。

ペイルライダー
 離婚寸前の両親の関係に心を痛めている少年・ユウ。
 ふとしたきっかけで知り合った、ハーレーダビットソンを操る
 黒ずくめの服にパンチパーマのオバちゃんライダーとユウの
 夏休み最後の日のあたたかくてせつない交流と、
 悲しい過去を持つオバちゃんライダーの復讐劇。

愛の泉
 1年前に最愛のおじいちゃんを亡くして打ちひしがれている
 大好きなおばあちゃんを元気付けるために、おじいちゃんと
 おばあちゃんの思い出の映画『ローマの休日』を大スクリーンで
 見せてあげようという計画を立てた5人の孫たち。
 上映に至るまでのそれぞれの奔走が描かれている。 

 
静かで淡々とした話から元気いっぱいの話まで、
5つの短編が収録されています。


映画がモチーフになっている、という共通点があるだけの
独立した話の短編集なのかな、思っていたのですが、
読み終わってみると、それぞれの話が微妙にリンクしているという
私の好みストライク!な作品集でした。

『区民会館大ホールで8月31日に上映されるローマの休日』
これがリンクの柱となっています。

1話から4話までのそれぞの登場人物がこの上映を見に行っていて、
5話でその上映秘話が明かされる、という作りになっています。

その他にも小さなリンクがちらほら。

2話の舞台となる、レンタルビデオ店《ヒルツ》と店員の青年は
他の話にもちらっと登場したりします。

あと、『カンヌかなんかの有名な賞を取った、金持ちでインテリの
主婦がアラブ系の労働者階級の若者と不倫をするだけのストーリー』
とされるフランス映画も、いくつかの話の中にでてきますが…。

登場人物の「クソみたいな映画」などという批判的なセリフや、
結局映画のタイトルが最後まで明かされないところをみると、
きっと金城さん、この映画大っきらいなんだろうなー、と。(笑)

話の中に本当にたくさんの映画がちりばめられているので、
古めの映画好きの方にはたまらない作品だと思いますが、
古い映画をあまり知らない私でも、十分に楽しめました。

私の中の《金城さん作品ランキング》で、ダントツ1位だった
『フライ,ダディ,フライ』を超えるくらい、大好きな作品となりました。


こんなことを感じているのは自分だけかも、とは思うのですが、
金城一紀さんと伊坂幸太郎さん、なぜか『同じ匂い』を感じるんですよね。

金城さんは、伊坂さんのような『伏線仕掛けのスペシャリスト』
ではないけれど、どちらも、ストーリーの流れやテンポに躍動感とか
疾走感みたいなものが感じられる作品が多い、という部分が、
自分の中で重なるのかもしれません。

同じ「疾走感」でも、伊坂さんが『小粋な大人の軽快な走り』(?)
だとすると、金城さんのは『悪ガキ小学生のピンポンダッシュ』
みたいな、違いがある気もしますが…(笑)

伊坂さんに関してはまだまだビギナーなので、これから読み進んでいくうちに
印象が変わっていくのかもしれません(*^-^)







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最終更新日  2008年05月23日 13時28分47秒
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