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カテゴリ:今野 敏
歌舞伎町24時―うらぶれた『梨田診療所』の 外科医・犬養和正のもとへ急患が運び込まれた。 血まみれの下半身、大陸訛りのある日本語。 銃弾が大腿骨で止まっていた。 中国人マフィア同士の抗争か。 銃弾を適出してベッドに横になっていると、 古い患者で、今は地回りの赤城僚二が入ってきた。 取り出した銃弾を渡せと言う。 犬養は亡き妻の忘れ形見、一人息子の翔一のためにも 面倒なことにまきこまれたくなかった。 どうするべきか…。 その頃事件現場では、捜査第四係の金森猛が 不可解な行動を取っていた。 (徳間ノベルス作品紹介より) 今野さんの13年程前の作品。 犬養は大学病院で将来を嘱望されたエリートだったが、 今では、うらぶれた病院の医師を務めている。 相手がヤクザだろうが不法滞在の外国人だろうが それが患者であるならば、犬養は治療に全力を尽くす。 時に治療費を踏み倒されても、動じることはない。 数年前に妻を肝臓癌で亡くた犬養は、それ以来、 一人息子の翔一を心の支えに生きてきた。 犬養は一人息子の翔一を「子供」としてではなく 「一人の人間」として対等な扱いをするよう努めている。 そのためか翔一は、小学3年生とは思えないほど しっかりしていて、大人びた物言いをする。 面倒な事件に巻き込まれてしまった犬養は、 隠すことなく翔一に全てを打ち明ける。 翔一の意見も聞き、迷いながらも、決して法や権力に 屈することなく、自分が正しいと信じた行動をとっていく。 犬養の職務に対しての一本筋の通った考え方や 融通のきかなさなどは、近年の作品『隠蔽捜査』の 竜崎を彷彿とさせるものがあります。 父子二人で料理をする場面が何度か登場しまして それが、映画「クレイマー・クレイマー」っぽくて ちょっと微笑ましい感じでした。 犬養は「キンキの煮つけ」「ビーフシチュー」など かなり凝った料理を作ったりするんですが、 「もしかして今野さん料理好き?」と思うくらい 材料から料理の行程まで詳しく描写されていて なんだか意外な一面を垣間見たような気がしました。 この作品には、刑事、中国マフィア、ヤクザなどの 蒼蒼たる面々(?)が登場しますが、よくよく考えてみると 法的なことは別として、人としての善悪が立場的には 逆転している状況になっていて、ちょっと面白いです。 終盤は「ちょっと無茶かも」ってところもありましたが、 全体的にはかなり楽しめる作品でした♪ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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