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カテゴリ:長嶋 有
アンティーク店フラココ屋の二階で居候暮らしをはじめた「僕」。 どうにも捉えどころのない彼と、のんきでしたたかな店長、 大家の八木さん、その二人の孫娘、朝子ちゃんと夕子ちゃん、 初代居候の瑞枝さん、相撲好きのフランソワーズら、 フラココ屋周辺の面々。 その繋がりは、淡彩をかさねるようにして、しだいに深まってゆく。 だがやがて、めいめいがめいめい勝手に旅立つときがやってきて―。 誰もが必要とする人生の一休みの時間。7つの連作短篇。 (「BOOK」データベースより) 長嶋有さん作品は『ジャージの2人』とこの作品と まだたった2作品しか読んでいないのですが、 独特の絶妙な作風にすっかり魅せられています。 この作品の主人公である「僕」は、最後まで名前が出てこないし 過去に何かあったらしいけれど、それも明かされない。 他の登場人物にしても、それぞれ何かを抱えているらしいけど それらについては最小限のことしか描かれていなくて、 「背景によるキャラクター作り」ってものをまるでしていない。 だから、なんだか掴み所のないキャラクター達ばかり。 でもみんな、すごく個性的だし魅力的なんですよね。 人物背景はわからなくても、物語の中での言動によって 各キャラクターの個性が活き活きと描かれていて なんかもう、「これで十分」って思えてしまう。 あと、長嶋さんの作品って、小説の骨組みであるはずの 「起承転結」をまるで意識していないみたいなんですよね。 特に「結」の部分に関しては、見事なまでに無視。 だから、それぞれの短編のラストも作品全体のラストも 「終わってねーじゃん!」って感じで(笑) ストーリーにしても、よく考えてみたら、ほんとに なんでもないようなことがツラツラ描かれているし。 でも、その「ゆるゆる・ダラダラ・グダグダ」な感じが なんだか妙に心の琴線に触れてくるんですよね。 いい感じに力が抜けていて、すごく和みます。 「よーし!やるぞー!」ってほど力強いものじゃないけど 「さて、明日もちょっくらがんばってみますか」みたいな 力みすぎない程よい元気をもらえる作品でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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