大原美術館に立ち寄る(後篇)
大原美術館に立ち寄る(後篇) あたふたと大原美術館に入る。 観光案内所で貰っていたパンフを提示すると入館料1,300円が1,100円になった。こういう割引は素直に嬉しい。 実は、ミニ同窓会は午後4時からF市鞆の浦で開催される予定である。考えて見れば鞆の浦に行くのは高校卒業以来である。それなら鞆の浦も見物したいではないか。 今回、大原美術館で観たい絵は、フジタの「舞踏会の前」1枚である。 判断は瞬時に決まった。11時までの1時間、フジタを観て倉敷からF駅方面行の電車に乗ろう。そうすればF市には12時過ぎに入ることができる。 大原美術館の目玉の作品は本館に展示されている。ギリシャ様式の本館の入り口をくぐるとモネやゴーギャンなど名品が所狭しと展示されている。 しかし、今回はこれらの絵を観に来たのではない。2階に展示されているフジタである。足早に2階に行き、エルグレコの「受胎告知」を横目で観ながらエコールドパリの絵の一群が展示されている部屋に入った。 そのいわば中心に「舞踏会の前」はあった。 いやぁ、何度観てもこの絵は素晴らしいのぅ。おいらはフジタの前で立ちすくむ。1時間弱、この絵の前を動かないで鑑賞したのである。 さて、この絵のメインは、中心に位置する、当時のフジタの妻ユキ(フジタ3番目の妻)である。 また、ユキの左の小柄な女性も目立つ。この女性はロシア出身のマリー・ヴァシリエフ。画家で人形作家でもある。 しかし、この絵を冷静に観ると、右から二人目の女性が気にかかる。フジタはこの女性を意識していたのではないか。無論、中心に描かれているユキを無視する分けには行かないが、あえてこの女性に赤色を使っているのには理由があるはずである。よく観ると藤田の好みの面長でもある。う~む、何かあるに違いない。 絵を観るには、こういう勝手な推測ができることも愉しみである。 なお、この絵はフジタが大切にしていた絵で、パリ時代の自宅のアトリエに飾っていた。また、フジタが一度目の日本への帰国時にはこの絵を持ち帰り三越百貨店で展示もしている。 おいらはこの絵を堪能して大原美術館を去ったのである。大原美術館よ、有難う(この項終わり)。******************************謎の不良翁 柚木惇 Presents******************************