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テーマ:あの本、おぼえてる?(347)
カテゴリ:あの本、おぼえてる?
今日は、「明恵上人」
前に「河合隼雄」がわかりません。という日記に、 >河合隼雄の「明恵夢を生きる」について、書いてみましたが、できませんでした。 >この「明恵上人」も興味深い人なのですが。 と、ちらっと触れた「明恵上人」 今晩は、この方について、書いてみたいと思います。 しかし、ネタ本は、山本七平の「日本的革命の哲学」 河合隼雄の「明恵夢を生きる」は、明恵上人がほとんど生涯にわたって書き続けた「夢記(ゆめのき)」をもとに、そこに、河合隼雄がユング心理学的解釈を加えていく本です。 従って、「明恵夢を生きる」は、理解するのも一筋縄でいかず、紹介するのは、されにむずかしい。ユング心理学講義の題材に明恵を使っているのですから。 さらに、明恵上人、自身が聖人ですから、凡人には理解がむずかしい。 しかし、さらに、しかしですが、 明恵上人は、日本人の考える和尚さんの理想像、そのままです。 外に見える姿に、わかりにくいところは、一つもありません。 仏様へつかえた一生。 弟子の修行に対しては厳しいが、そのほかの場面の人間的優しさ。 権力に対する無欲。 承久の変の時、逃げ込んできた天皇方の敗残兵をかくまい、鎌倉方の武将、北条泰時の前へ引き出されても、毅然とした態度を崩さない。 この時は、泰時の方が無礼を謝り、その後、尊敬し何度も話を聞きに行ったという、話が残っています。 これは、明恵が天皇方の人間で、鎌倉に逆らったという意味ではありません。鎌倉方の人間が逃げ込んできても、それをかくまったでしょう。 彼は、仏法のみが尊しで、世俗には興味がなかったという事です。 この姿勢について、山本七平は、「釈尊への恋慕」と言っております。 では、なぜ、「釈尊への恋慕」を絶対とし、修行に明け暮れていた明恵上人のもとへ、北条泰時は通っていたのでしょうか。 1、天皇中心の政治から、武家社会への移行期だった。 2、だが、武家には世間を支配する、法的根拠は無い。 3、武力絶対主義で統治すれば、現在のイラクのように、 血で血を洗う闘争になる可能性もあった。 4、しかし、今さら、天皇・貴族の政治に戻ることはできない。 実際に世の中を秩序立て、世間を回していたのは武家なのである。 ここで、完全に世俗を離れているゆえに、逆に日本のあるべき形を見ることができた、明恵上人の思想が鎌倉の統治に役立つのである。 一言で言えば、「あるべきようは」である。「帝王は帝王の、農民は農民の、武士は武士の、僧は僧の”あるべきようは”を、きちんと守っていれば、自然と世の中はおさまる」という考え方である。 もちろん、明恵上人が政治に口を出したわけでは無い。 北条泰時が、日本史上初の武家統治のやり方に迷い、明恵上人に教えていただいのである。泰時の理解した明恵上人の思想である。 つまり、日本には、もともと自然的秩序があり、支配者が無欲であれば、おさまるようにおさまる。という考え方である。 この考え方は、その後、600年間、日本の中心思想であり、現在のわたし達も影響を受けている。 従って、我々は自然を好み、不自然を嫌うのである。 この場合の自然は、ナチュラルという意味ではなく、日本的なあり方という意味である。だから、日本人は明文的な法を嫌い、話し合って、お互いの間の秩序をすりあわせていくやり方を、好んだのだ。 もちろん、現在の世の中は「あるべきようは」では、おさまりません。 もはや、日本人全員が納得するような、自然秩序はあり得ないからです。 わたしは、日本にずっと住む気のある人は、人種を問わず、全て日本人と思っていますが、万人の共感は得られないでしょう。 何らかの思想無くして、法秩序は立ちません。 願わくば、明恵上人のような人格者があらわれて、新しい理想をしめして欲しいと思うのですが。 多分、凡人が集まって、しこしこやっていくしかないのでしょう。 ※1 今回、明恵上人の宗教家、聖人としての面に全く触れられませんでしたが、 わたしの能力を超しておりますね。はるかに。 興味のある方は、河合先生の本を読んで下さい。 ※2 山本七平氏の本は毀誉褒貶激しいですが、わたしは好きです。 山本七平氏が嫌いな人は、鏡に映った日本人の姿が嫌いなのでしょう。 わたしも、そこは嫌いです。 ※3 前に紹介した「この役立たず! ホリイのずんずん調査」ですが、日本史の年号で、みんなが一番覚えてるのは、何か?という調査がありました。 1位は「いいくに作ろう鎌倉幕府。 -鎌倉幕府の成立- 1192年」 2位は「なくよウグイス平安京。 -平安京へ遷都- 794年」 ※4 山本七平「日本的革命の哲学」の本当の主人公は、北条泰時。 ← メールマガジン始めました。「応援メール」です。登録はこちら。よろしくお願いします。 バックナンバーはこちら 人気blogランキング ←1日1押し有効です。よろしくお願いします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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2005.05.22 23:02:08
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