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月夜に夢を  

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2007.04.02
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カテゴリ:Life
死ぬ準備、ときくと どうしたって仕事柄まず遺言書が頭に浮かぶ。
だが 70歳を迎えた彼女が言う準備は、それではなかった。

近所の独り身の女性が亡くなったのだそうだ。
葬式も済んだかどうかもわからぬうちに
(つまり親戚縁者が出入りした形跡も無いうちに)
重機がやってきて 古家を根こそぎ壊していったのだと。
箪笥にしまわれた着物もそのまま ただの産業廃棄物となった。
手をかけて育てた庭の鉢植えも もちろん。
その家の老女が大事に抱えてきたモノたちは すべて。

それを見ていて 涙が出た という。
息子が、全部ゴミだから と言っていたのをきいて また涙が出た という。

所詮残されたのはモノだから 不要だと思えば処分するしかない。
それがおそらく合理的なやり方だろう。
そこにあった生活の息吹を感じる必要もないのだ。もう主はいないのだから。

そうは考えても やはり哀しいことだと思う。
形見分け、という故人を偲ぶものがあるはず。
物色するのとは違う、確かにそこに存在した人生に敬意を払いつつ 整理していく行為。
たとえ高価な着物や宝石が無くったっていいじゃないか。
お金や土地を残せば奪い合うほど関心を示すのに そういったものには目もくれず。
さびしいことだと思う。


自分もそうなりかねないと 彼女は真顔で言った。
それではあまりに哀しすぎるから、自分で生きているうちに整理しとこうと思って。
そう思うと10年じゃ足りない気がして おちおちゆっくり寝てられないのよ。
そう言って 笑った。

きちんと 要らないものは自分で始末して
大切にしてきたものは大事なひとに 少しずつわけていくのだと。

そうやって身辺整理をして 死を迎えられるひとは少ないだろう。
おそらくは ある日突然にそれはやってくるはずだ。

あたしにはまだ その覚悟がない。
あと倍年齢を重ねて 彼女の年になったら 
果たしてそのときはそう思えるようになっているのだろうか。












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Last updated  2007.04.03 01:40:15
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