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月夜に夢を  

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2008.08.10
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カテゴリ:Life
繁忙期で 心身ともにすっかりくたびれ果てていた頃
急に思いたち 衝動買いした金魚だった。
「酸素が足りなくなりますよ」という店員のアドバイスも思いっきり無視し
あの昔ながらの風鈴をひっくり返したようなガラスの金魚鉢も一緒に買い求めた。
ゆらゆら揺れる様を呆けて眺めてでもいれば 癒されるかなと期待したのだ。

植物を含め 生き物の世話が苦手なあたしにしては
かなり長生きしたのではないかと思う。
春を越え 夏を越え また繁忙期がやってきても 相変わらずゆらゆらしていたし
結婚するとか しないとか そのあたりのばたばたした時期も
リビングの片隅でのんきに漂っていた。
一緒に住むようになってからは 夫が餌係担当になり
勝手に違う名前をつけて呼んで話しかけていた。

犬や猫のようにその存在を誇示するわけでなくても
水槽の水を替えるのがめんどくさいあまりに 衝動買いを後悔されても
それなりに我が家での地位を静かに確立していたのだ。

だのに あっけなく死んでしまった。

昨日仕事から帰ってくると なんだかお腹を上にして泳いでいる。
遠い昔 子供の頃飼っていた金魚が
これと同じ様子でそのあとすぐ死んでしまったことを思い出し
もう長くはないってことだなと覚悟はしたのだが。
その夜のうちに逝ってしまった。
あっという間だった。

金魚鉢に浮いてしまった 彼女(たぶん)をもてあまし
あたしはビールの酔いも手伝って そのまま寝てしまった。


朝起きると さすがに家中が生臭いと娘に文句を言われ
迷った挙句生ゴミと一緒に捨てた。


そこには何も存在しないと わかっていても
亡骸をゴミに捨てるというのは たとえ金魚でもためらわれる。
これが人間ならなおさら。
献体に賛成しない夫の気持ちもわかるような。





つい 金魚鉢の置かれていたリビングの隅に目をやってしまう。
そのうち慣れていくのが 淋しいと思いながら。






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Last updated  2008.08.18 20:09:49
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