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カテゴリ:アストラルストーリー『紫光の大地へ』
王に囚われた茶巫女は、頑なに王を拒否した。
どのような甘い言葉も 乞い 脅しも 硬く閉ざされた茶巫女の心の扉を開くものをもはやこの世には存在しなかった。 王は茶巫女の報復への恐れの一方、まだ不死への手がかりを手放したくないという思いで考えあぐねた。 「今は無理でも、まだチャンスはあるかもしれない。」 其の為には、楽師を失ったショックで彼女が自ら命を絶つという事があってはならない。 また、楽師を助けようとした勢力とも接触させてくはない。 その結果、 王は、彼女をとある小島の牢獄に両手を鎖に縛り幽閉するという行動にでた。 >>>>>>>> 鎖に繋がれ、虚ろな心の中で彼女は王を笑った 憎む気などない 小心な王よ いや、男よ 小さき自分の想念の世界に自らの頚を締め付ける 哀れな魂 悪いのは私だ 私は死にはしない 私は愛する人の分まで生きなければいけないのだ 真に愛する人を失った長く暗い寂しさを背負い 満たされぬ思いを抱き 生きるヨコロビもなく 愛する人が過ごせるはずだった時間を私が背負う それが私の報いなのだ >>>> 大きすぎる悲しみは、涙さえ、その身から奪う。 薄暗い闇の中、じっと茶巫女は座りつづけた。 動くことすら禁じ、可能な限りの苦悩をわが身に受けたいと願いながら。 時がたち・・・。 微動だにしない茶巫女が自ら命を立つ恐れも、復讐の恐れもないという看守からの進言があり、王は恐る恐る茶巫女の鎖を解いた。 しかし、逃げ出し自分に仇名すかもしれないという恐怖には打ち勝てず、彼は彼女の右足の骨を粉砕した。 >>>>>>>> 人の身でありながら、時の無い神殿に暮らした為なのか、 茶巫女はある一定の年齢から歳を経なくなっていた。 足が粉砕された痛みも、這うようにしか動けない事も彼女は自分への罪として受け止めた。 ただ、投獄前の彼女の行いを心ひそかに慕う看守の手によって、薄暗い牢獄から暖かな日の差す緑の大地に運ばれた時だけは、 久々にあたる木漏れ日に心が和らぎ、その暖かさに身をゆだねる事をわが身に許した。 さらに月日がたち、 茶巫女が好んでいつも座っている大きな木の下に、一つの黒い光が漂ってきた。 茶巫女はそっと手を伸ばしてその黒い光を受け止めた。 それは王の魂だった。 死して肉体の衣は脱ぎ捨ててもなお、心にまとう欲望の衣は脱げず、 茶巫女の元へと彷徨い出てきたのだった。 手の内の黒き光をしばし見つめた茶巫女は、その魂をそっと胸に抱き寄せた。 死んだのか王よ 死すれば、その黒き衣を脱いで上がるがいい。 憎みはしない おろかな思いに囚われし魂よ ゆく季節の中 流れる時の中に どれだけの叡智と学びと向上の宝があるかも分からず 其の身のみを保つ永遠の命偽りの名に飾られた『停止』を求めた魂よ さあ・・・ おいきなさい。 人は光なのだから。 浄化された王の魂は綺麗な光となり、かなたへと旅立っていった。 『人は光なのだから・・・・』 自ら発した、その言葉が彼女の閉ざした心に風を吹かした 涙が滝の様に流れた 楽師の魂が去った時に心を閉ざしてしまった彼女は、 長い長い年月を経てやっとその時、初めて泣いたのであった。 抱きしめてくれていた大きな腕 顔に添えられていた大きな手 背中のぬくもり 安心感と満ち足りた思い もう、二度と・・・二度とこの身に感じることはないのだ。 泣いて 泣いて 泣いた そして・・・・・ いつしか、彼女の口から、小さく小さく歌詞がこぼれた それは楽師が歌っていた歌だった。 楽師の魂が入った歌だった。 彼の命を奪ってしまった私は、 彼の分まで一人ぼっちで生きて、 そして、彼の代わりに彼の歌を歌おう。 彼は歌の中で生きている。 彼の存在の証が、彼のつくったこの歌なのだ。 茶巫女は、歌い続けた 歌よ 山を越え 谷を下り 野を渡り その振動は空を伝わり 海に映り 世界にひびけ 歌よ 風になれ 世界中に彼を運べ 心を閉ざしていた時には、木の下にたった一人で座っていたが、 歌つづける茶巫女の下には、鳥や動物たちが集まった。虫が舞った。 歌よ 風になれ 風になれ >>>>> さらに長い月日がたち、 王が亡くなった後も、茶巫女を慕い世話をしていた老看守も亡くなり、 その後を継いだ息子が妻を迎え子供が野を走る頃。 ついに、茶巫女の口から・・・・歌が消えた。 いつも座る大きな木が彼女の背中を優しく支えた。 空にはララーが子供の頃いつも見ていたような大きな夕日。 黄昏の光の中、 ララーはその肉体の衣から旅立っていった。 >>>>>>>>>>>>> 気がつくと、荒れすさぶ雪と氷の山の合間に 茶巫女は立っていた。 目の前に、人がいる その場は以前も自分の封印一つを解除した時にみた光景であった。 あの時は、ここがどこだか、目の前の者が誰だか判らなかった けど、今は分かる。 自分の後ろには険しい雪が吹きすさぶ山がそそり立つ。 激しい吹雪の中、その向こうは見ることすら叶わない。 それは『ロスト(転生できないほど傷つき、砕けてしまった魂の状態)』の泥沼の世界。 自分が立っている、ここはその境界線である。 そして、目の前に立っているのは 漆黒の髪を持つ『黒巫女』 神聖なる闇の化身である彼女の前に立つものは、いかなる物でも自分の心の闇と対峙する だから、神殿に居た頃、楽師はいつも黒巫女の前で固まったいたのだ。 彼は一体どんな心の裏側を見ていたのだろうか・・・。 『これでいい?』茶巫女は黒巫女に尋ねた。 実はその晩、銀巫女の本体とひょんな事から5時間近くスカイプで話していた。 神殿の事、レムリアの事、リアルでの事・・・・色々な話をする中で、トリトンさんとの事である大きな決心をした処でした。 その決心がきっかけになったのか・・・・。 脳細胞が活性化を起して『寝れなくなりました』(爆) 眠れぬままに回想を始めてから実は数回、この場面に来てていた。 しかし、その場に立つ黒巫女に『全てを思い出していない』と記憶の中に返されていたのだ それを思い出す事が、実は、私がトリトンさんにした『ある決心』に必要だったのあった。 『思い出さなくちゃいけない事はおもいだしたかしら。私は自分の裏をみれたのかしら』 尋ねる茶巫女に対して、初めて黒巫女が笑った 神殿にいるときでさえ、多分一度も見た事がなかった黒巫女の微笑みだった。 『そう、終わったのね・・・・』ララーはつぶやいた。 黒巫女は消え、 吹きすさぶ雪嵐の中、彼女は一人たたずんでいた。 さあ、 これから『彼』を探さなくては。 彼女は空を見上げた。 身を千切るような吹雪の中、雪の一片一片が見えない彼方からやってくる千切れた魂の欠片なのだ。 どこにいるのだろう 時を越え 場所を越え いつか彼と出会いたい 彼と出会えるように 広く 広く 広がろう 風になりたい ララーは眼を閉じた。 吹雪に逆行するような一陣の風が雪を舞い上げ・・・。 そして 誰もいなくなった。 『風になりたい~茶巫女の物語』ENT >>>>>>> ちょうどこの話が浮かんでくる前に頭の中で流れまくっていたのがこれです。 『風になりたい』(YouTube) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.04.10 23:28:20
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