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2013.11.04
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テーマ:徒然日記(23462)
カテゴリ:音楽
前回の「フェルマーの最終定理」の表題を少しモジッてみました^^;
昨日のNHKスペシャルが「ストラリヴァリウスのミステリーに挑む」という事で楽しみにしていたのですが、見応えがあり新たな視点を私に与えてくれた秀逸な番組でした。
数学者フェルマーと弦楽器職人ストラディヴァリの生きた時代は少しですが重なりますので、17世紀の生んだ天才を2回続けて日記で取り上げる事となります。
後世に大きな謎を残したという点でこの二人は共通しています。


「ストラディヴァリウス」(以下ストラド)とは17世紀から18世紀の初頭にかけてイタリアのアントニオ・ストラリヴァリが制作した弦楽器の総称です。殊にヴァイオリンが有名で単にストラドと言うとヴァイオリンを指す事が殆どですが、他にもチェロやビオラ、ギター等が制作されています。楽器やクラッシックに興味が無くても、此の数億円の値をつける弦楽器達の名を知る人間は少なくないでしょう。


ストラドは本当に数億円に値する音を奏でるのか?
もしそうであるなら、他のヴァイオリンとの違いは何処にあって、「現代のストラド」は可能なのか?
NHKは現代の優秀なヴァイオリン職人と科学者の協力の下に其の謎と可能性に迫って行きます。先ず、既に多くの職人と科学者が此の謎に魅入られて永年取り組んで来ている現実を我々は知る事となります。伝統と科学の両視点での構造や材質への研究が音響学と結びついて「現代のストラド」と呼べる様な試作品にまで辿り着いていた事は驚きですが、それでも奏者にとっては「ストラドには及ばない楽器」というのが現状の様です。


謎は解決されませんでしたが、放送で知った現在認識されている情報は

1:幾多の試行実験から、専門家でも聴者としてストラドとモダンヴァイオリン(以下モダン)の音色を聞き分ける事は不可能だとされている。

2:ストラドは音の響きが特定の方向への指向性を持ち、モダンは全方向へ均等の響きを持つ。

3:プロ奏者は演奏中に双方の違いを認識し、ストラドの音色の優越性を認識する。

4:奏者はストラドの「反応の良さ(心地良さ)」を強調する。

というものだけです。驚いた事にこの4つから導かれるのは奏者と聴者が同じ音色を聞いている訳では無いという事です。


1:を根拠にストラドを特別に有り難がる音楽界の風潮は愚かで「共同幻想だ」と揶揄する意見を市井に多く見ます。鑑定書付のストラドが現存するハズのストラドの3倍以上存在しているという嘆かわしい現実も其の意見を後押ししていて一応の説得力を持ちます。しかし、私も当然聞き分けなど出来ないのですが、如何しても其の意見に賛同出来ないのは、一音楽ファンとしての熟練のプロ奏者達の感性への絶対的な信頼です。


聴者側と奏者側が感じるストラドの音色の違いは、NHKの実験結果から指向性による音情報の違いだろうという推測は容易に出来ますが、此処で注目すべきは「演奏者の心地良さ」という感覚です。私には音色の良し悪しの感覚と演奏の良し悪しの感覚が全く同じだとは思えず、其処には奏者が心地良く演奏出来るという条件は大きく関係する様に感じます。


楽器は奏者の為に職人が苦心して創るものです。ストラディヴァリはその経験と試行から、聴衆には悟られずに従来のヴァイオリンより奏者が心地良く、演奏もし易くなる為の「小さな気づき」を職人として具現化出来たのではないでしょうか。おそらく解ってしまえば「こんな事だったのか!」と落胆する程の小さな細工ではなかろうかと想像するのですが、それが指向性の変更だったのか他にあるのかは結局謎のままです。


謎の解明の為にはストラドだけでなく、同じく名器と言われるガルネリ等も含めての時系列での構造変化の研究は如何しても必要だと思われます。金が掛かる上に見返りが無い研究ですので酔狂な人物の登場を期待するしかありませんが・・・





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最終更新日  2013.11.05 01:35:24
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