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カテゴリ:今を歩む
先日、仕事の合間に飯を食いながらテレビを見てたらアメリカのメジャーリーグがやってた。
ほとんど惰性で何も考えずにその試合を見てたんだけど、途中で交代したある一人のヒゲのデブ親父ピッチャーのピッチングを見て途中でパンを口に運ぶのを止めてしまった。試合はレッドソックスと何処か忘れたけど、そのレッドソックスのヒゲデブ親父ピッチャーが物凄い魔球を投げて相手チームの打者を翻弄。もうね、手も足も出ないってのは正にこういう事を言うのだと思う。 魔球とは言っても侍ジャイアンツの「消えるボール」とか星ヒュウマの「大リーグボール第1号」などといった非現実的なものでは勿論無く、現実で投げられるピッチャーの恐らく最強と思われる魔球。それは、 【ナックルボール】 時速90キロほどの回転の無いボールがヒトダマのようにユラユラ揺れてフワフワと漂い、打者の手元に達した途端ありえない変化をする。恐らく投げてるヒゲ親父でさえ何処に行くのか解ってないと思うけど、そこはやっぱりプロなので打者が見逃してもちゃんとストライクは入ってた。 よく少年時代に卓球の玉を投げて遊んだ事無いですかね、あの球は軽くて正確な円形ではないのでそのまま投げたらありえない変化をする。ただストレートを投げてもナックルのような変化をするんだけど、そんなナックル球を野球の硬球でやってしまうという、これは打てませんよ。 でもね、結局最後の9回にサヨナラホームランを打たれて負け投手になってた。 こういうのが異能投手ならではの運命でそこがまた良い。超特急スピードボールや豪腕投手も見てて楽しいけど、握力が低下した最後に球がスッポ抜けて変化せず、ただの90キロのストレートを投げて特大ホームランを打たれるかもしれない、という見てるほうに最高の緊張を演出してくれる異能投手はもっと楽しい。 異能といえば野球だけにあらず、色々なところで活躍してる人がいますね。 例えば自民党の小泉さんなんかはナックルで、田中真紀子はナックルは投げられない。芸能人ではタモリは投げる球がすべてスローカーブで、たけしや松本人志なんかはナックルを投げる。親子そろって直球剛速球な球を投げる石原王朝はナックルを投げる事は出来ないけど、長野県知事の田中ナントカはナックルを投げる。 しかしナックル系はただ単にフワフワする球を投げるだけではない。例のヒゲ親父だって150キロを超えるストレートを投げる事ができる。見た目は速球に見せつつも、回転の無いボールが揺れて浮いて落ちるのだ。 遊園地のジェットコースターなんかは、この世にあるもので最もナックルに遠い前世紀の遺物。シャーロックホームズよりも刑事コロンボのほうがナックル系で。質屋よりリサイクルショップやフリーマーケットがナックル系。相撲で言うと舞の海がナックル系だったけど、今はナックル系力士が少なくなってあんまり面白くないですね。 一時代人気のあったモーニング娘よりも、日本に来てドタキャンを繰り返したロシアの2人組女の子のほうがナックル系。広末涼子の時代は終わり、ナックル系代表は深キョン。往年の映画スターの老人代表は実直な笠智衆だったけど、いまやクニタチの長老、関頑亭翁がナックルの元祖。 演歌歌手の氷川きよしは固くて筋ばかりで、前川清のナックルが力を増した。古典的ナックルは井上陽水で新興ナックルは奥田民生。絵で言うとピカソよりも渡辺和博がナックル。大型のスポーツタイプの単車よりも大型スクーターのほうがナックル系。トヨタよりもマツダのほうがナックル。 ゴールデンタイムにやってるトレンディドラマよりも昼間やってるB級ドラマのほうがナックル。一見スニーカーに見えるけど、実はスーツに似合う革靴もナックル。ブーツで言うとレッドウィングよりもゴリラのほうがナックル。料理人で言うと石鍋さんよりも三国さんのほうがナックル系。源氏物語の紫式部だって超ナックル。日本野球の原監督はナックルは投げられないけど、ヤクルトの古田監督にはナックル系の魅力があるし、イチローや松井よりも新庄がナックル。 水戸黄門よりフーテンの寅さんがナックルで、新幹線よりもローカル線ワンマンディーゼルのほうがナックル。白木やなどの若者向け居酒屋よりも場末の大衆居酒屋のほうがナックルで、生牡蠣よりも牡蠣フライのほうがナックル。ナポリタンやカルボナーラよりもスープパスタがナックル。冷奴よりも湯豆腐のほうがナックル。 腕時計よりも目覚まし時計、黄色いアロハシャツよりも赤いアロハシャツ、ウィンドウズよりもマック、総合格闘技よりもプロレス、マルボロメンソールライトよりも赤のマルボロ、電気剃刀よりも手動T字型剃刀、ホテルの料理よりレストランの料理、液体ボディソープで身体を洗うなら石鹸で洗ったほうが断然ナックル系。 シンクパッド、プラスチックのタッパー、野球帽、諸葛孔明、アナログ回線、黒電話、天野喜孝、孫子、グラップラーバキ、ドラゴンボール、アナログレコード、5円玉、ルーズリーフ、創作料理、100円のワイン、携帯のショートメール・・・・・ これは全てナックル系である。 ナックル系は気取らず、自然体でナイーブでありつつ時代を生き抜く魔球なのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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