花を待つ時間
マンション住まいの我が家だが、狭いベランダをささやかなガーデンスペースとして利用している。緑は目に優しい。気がつくといつも無意識のうちに目が向いている。半年前にふと思い立ち、ベランダを改造した。といっても、いまどきのウッドデッキまでは手が出ず、いたってお手軽、安価な人工芝。ホームセンターで一枚99円だったものを16枚しきつめ、開閉式のラティスでもの干しスペースを仕切り、プラスティック製の小さなテーブルセットを置いた程度。でも、十分、楽しいスペースになった。我が家は、ベランダに面したリビングの窓が大きな掃き出しのガラスなので一歩、部屋に入ると嫌でもベランダの様子が目に飛び込んでくる。花が鮮やかに咲き、緑が生き生きと麗しい時はなんとも心やすらぐひとときだが水やりを忘れ、ぐったりと今にも枯れかかっていたり何故か緑が茶色に変色してたりする様も一目瞭然なので、なかなか気が抜けない。枯れてしまった鉢を眺めるのはほんとうにむなしい。でも気を抜くと、すぐに枯らしてしまうしその様子がありありと見えるということにストレスを感じたこともあった。でも今はなかなか調子がいい。酷暑の夏を終え、幾度となくやってくる台風のたびに鉢をリビングに運び込み腕白盛りの2歳の息子の世話で手一杯だというのに緑の世話もやめられない。そんな気持ちが通じたのか今、ベランダの緑たちは、澄んだ秋の空からふりそそぐ陽光に輝いて毎日ほんとうに鮮やかなのである。一番、手を焼いた、ミニチュアローズの鉢は新芽が伸び、次々とかわいい花を見せてくれるしベビーピンクのベコニアも、赤紫のペチュニアも今が盛りとばかりに咲いている。調子に乗って、きょう息子とベランダでチューリップの球根を植えた。球根栽培は初めての経験。いつもきれいな花をつけた鉢植えを買うばかりだったが、ちょっとステップアップして花を待つ時間を楽しんでみようと思う。息子は大喜びでスコップを手にチューリップが明日にでも見られるような勢いではりきって植え付けた。ちょうど息子が3歳の誕生日を迎え幼稚園に通い始める春にうまく咲いてくれるといいな。息子には「ようちえんに頑張っていけるように、きっと チューリップさんが応援にきてくれる」と話した。息子は心の底からわくわくした表情を見せ「ほんと~?」と叫んだ、平和で幸せな秋の午後。