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カテゴリ:本・読書
父親に連れられて操浄瑠璃(人形浄瑠璃)の小屋に入り浸り、やがて作者としての人生を踏み出す、近松半二の生涯。
・・・という紹介では何も伝わらないもどかしさよ。 物語を編み出す者の情熱といくばくかの狂気。 このあたりの感傷は、読んでいる間に観た「映画大好きポンポさん」から受けるものともオーバーラップする。 主人公が周囲の者たちを巻き込んで作り出す渦は、同時に時代やもっと普遍的な言うなれば「創造」の神が作り出す渦に巻き込まれることでもある、という感覚。 かといって物語は押しつけがましく熱にうなされるようなタイプではなく、 常に飄々とした生き様で人を惹きつける半二のキャラクターを中心に回るスタイルが、まずもって小気味いい。 浄瑠璃に取って代わる勢いの歌舞伎作者として目覚ましい活躍を見せる並木正三との、ライバルであり、理解し合える友でもある関係性も、読んでいて気持ちが良い。 半二の妻となるお佐久、兄の許嫁であったお末など女性陣も魅力的だ。 創作者の業の物語でもあり、 人生の素晴らしさの賛歌でもあり、 と同時に人と世の理のままならなさ、無常さの物語でもあり、 それら全てが虚実の被膜の中での夢物語であるという多重構造さえ感じてしまう。 といったあれこれが、実に軽快な関西弁のリズムに乗って一気に読める、上質のエンターテイメントに仕上がっている。 すごいっしょ、これは。 随分久しぶりに、万人に薦めたい傑作を読めた! 第161回(2019年)直木賞受賞作。 何を今更というご批判は甘んじて受けますです、はい、すみません(ぺこり) 道頓堀ドリーム度★★★★★ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023/03/06 11:20:23 PM
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