TORTURE AT ABU GHRAIB
THE NEW YORKERのページ(http://www.newyorker.com/)で上記の記事を見つけた。この記事はSeymour M.Hershという人が書いているが、その基礎になっているのは、軍の収容所の調査を専門にしているMajor General Antonio M.Tagubaという人物の53ページにもおよぶレポートである。ここでは焦点はもちろん、イラクのABU GHRAIB監獄の調査である。4月30日にこの記事は書かれている。その後D.Rumsfeldへの公聴会などが行われ、この事件がアメリカ軍を揺るがす不名誉な事態であり、政権自体への甚大な影響も及ぼしかねないものであることが明瞭になりつつある。しかし基礎的な事実はこのTagubaのレポートで十分である。このレポートは2月に完成されている。公表を意図したものではないというが、それをTHE NEW YORKERが手に入れた経緯は私には分からない。それに、このレポートとこれらの「拷問」が明らかになって4月9日にバクダッド近郊のキャンプ・ビクトリーで行われたSergeant Frederick(写真などで有名になった一連の残虐行為の首謀者と言われる軍曹)に対するヒアリングでの彼や他の証言者たちの証言も数多く含んだ記事である。私が理解した限りでだが、この記事を要約してみたい。1、ABU GHRAIBはフセイン時代から拷問や処刑で悪名高い監獄として知られていた。当時は5万人程の収容者が普通のベッドサイズよりも狭い独房に分けられて詰め込まれていたという。今やアメリカ軍の刑務所になり、女性や十代の人間を含めて何千人というイラク人のほとんど市民が詰め込まれている。彼らはランダムな掃討やハイウエイのチエックポイントで拘束された。普通の犯罪、連合軍に対する犯罪、連合軍に対する反逆者の少数のリーダーという高い価値の犯罪者、この三つのカテゴリーに収監者たちは大雑把に振り分けられる。2、前年の6月、ジャニス・カーピンスキーという予備役の将軍が第800憲兵隊の司令官に任命され、イラクの軍刑務所の管理を担当することになった。彼女は戦争区域におけるただ一人の女性司令官である。91年の湾岸戦争のとき特殊部隊として勤務した作戦、情報部門のスペッシャリストであるが、刑務所の仕事はしたことがなかった。今や彼女は三つの大きな監獄、8個大隊、そして3万4千人の予備役の軍人、その多くが彼女と同様刑務所運営には素人であるが、その責任者である。ジャニスは民間にいたときはビジネスコンサルタントであったが、5歳のときから兵士への夢を抱いていた。前年の12月にセントペテルブルクタイムズのインタビューで彼女は新しい仕事への情熱を語るとともに、ABU GHRAIBの収容者に関して「ここの生活状況は家にいるよりもずっといいので、私たちの心配事はたった一つ、収容者がここを離れたがらないのではないかということです」と語っている。その一ヵ月後彼女は譴責処分を受け、停職になった。リチャード・サンチエス中将による軍の刑務所への調査が進行中である。少将Antonio M.Tagubaの報告書の結論によれば、軍刑務所組織の制度的な欠陥は眼を覆うばかりのものであった。特に2003年の十月と十二月の間に「サディスティックで、露骨な、わいせつな犯罪的虐待」の多くの事例がABU GHRAIBで見られたという。これらの組織的で不法な虐待はTagubaによれば第372憲兵隊の兵士たちとアメリカの情報コミュニティのメンバーによるものである。372憲兵隊はカーピンスキー大隊に直属している。3Tagubaのレポートには悪事の具体例が述べられている。(以下はあえて訳出しない。)Breaking chemical lights and pouring the phosphoric liquid on detainees; pouring cold water on naked detainees; beating detainees with a broom handle and a chair; threatening male detainees with rape; allowing a military police guard to stitch the wound of a detainee who was injured after being slammed against the wall in his cell; sodomizing a detainee with a chemical light and perhaps a broom stick, and using military working dogs to frighten and intimidate detainees with threats of attack, and in one instance actually biting a detainee.4、CBSで放映された写真、イラクの収監者が屈辱的な姿勢を強いられているそばでGIたちがあざけっている、この6名の容疑者たち。チップの名で知られている古参の三等軍曹Ivan Frederick、技術兵Charles Graner、軍曹Javal Davis、技術兵Meagan Ambuhl、技術兵Sabrina Harman、そしてprivate(兵卒)Jermy Sivits,この6名は共同謀議、職務怠慢、収容者に対する残虐行為、暴行などの罪でイラクにおいて告発に直面している。7人目の容疑者プライベートLynndie Englandは妊娠の後、ノースカロライナのフォートブラッグに送還された。5、以下この記事の筆者Seymour M.Hershが写真を読み解く部分(ここも訳出しない)。The photographs tell it all. In one, Private England, a cigarette dangling from her mouth, is giving a jaunty thumbs-up sign and pointing at the genitals of a young Iraqi, who is naked except for a sandbag over his head, as he masturbates. Three other hooded and naked Iraqi prisoners are shown, hands reflexively crossed over their genitals. A fifth prisoner has his hands at his sides. In another, England stands arm in arm with Specialist Graner; both are grinning and giving the thumbs-up behind a cluster of perhaps seven naked Iraqis, knees bent, piled clumsily on top of each other in a pyramid. There is another photograph of a cluster of naked prisoners, again piled in a pyramid. Near them stands Graner, smiling, his arms crossed; a woman soldier stands in front of him, bending over, and she, too, is smiling. Then, there is another cluster of hooded bodies, with a female soldier standing in front, taking photographs. Yet another photograph shows a kneeling, naked, unhooded male prisoner, head momentarily turned away from the camera, posed to make it appear that he is performing oral sex on another male prisoner, who is naked and hooded.6、このような非人間的行為はどんな文化においても受け容れられることはありえない。しかしアラブ世界ではなおさらとくに受け容れがたいものだ。ホモセクシユアルな行為はイスラム法に敵対するものだし、男が他の男の前で裸になるということは屈辱的なことである。ニューヨーク大学で中東研究をしている教授バーナード・ハイケルによれば「お互いに重なりあったり、自慰を強制したり、互いの前で裸になったりすることは、すべて拷問の形式にほかならない」。7、372隊の収容者に対する残虐行為はほとんど日常化していて、兵士たちは隠す必要も感じなかった。4月9日のhearingである証言者は次のように証言している。(ここもあえて訳さない)。I saw two naked detainees, one masturbating to another kneeling with its mouth open. I thought I should just get out of there. I didn’t think it was right . . . I saw SSG Frederick walking towards me, and he said, “Look what these animals do when you leave them alone for two seconds.” I heard PFC England shout out, “He’s getting hard.” 8、これらのことが明白になったのはJoseph M.Darbyという憲兵のタレコミによるものだ。政府の立会人でCID(Army’s Criminal Investigation Division)のメンバーであるScott Bobeckによると、彼らの部屋のドアの下に匿名の手紙があった。Joseph M.DarbyはGranerからCDを手に入れ、そこに裸のイラク人収容者を見つけた。かれは気分が悪くなり、これらのことを悪だと考えた。そこから調査がスタートした。9、判明したことはフレデリックと彼の同僚たちがいかなる「収容者の扱いに関するガイドライン」も与えられていなかったことだ。372憲兵隊のイラク到着時の任務は日常的な交通と警察の任務であったが、2003年の十月にABU GHRAIBの勤務を命じられた。フレデリックは37歳で、他の同僚よりも年輩だったので、自然にリーダーになった。彼はアメリカでは6年間バージニア矯正施設の警備員として働いていた。10、軍の被告側の弁護人であるマイヤー、彼はかつて1970年代ベトナムのミライ村で起きた大量虐殺時の被告側弁護人でもあったが、私に次のような方針で彼のクライアント(フレデリック)の弁護をするつもりだと語った。彼は上官の命令、特に軍の情報部の命令を実行したにすぎない。「この連中、バージニアの田舎から出てきた連中がこれらのことを彼ら自身の考えでやってのけたと君は思う?アラブ人を当惑させ、彼らに話をさせるためには、彼らを裸にしてうろつかせればいいと、この田舎出の連中が本当に決めたと思う?」11、家族に対する手紙やメールのなかで、フレデリックは繰り返し軍情報部について言及している。それはCIAの職員や言語学者、そして国防(省)筋の私的な機関から派遣された尋問のスペッシャリストたちを含んでいる。彼らがこのAbu Ghraibのなかでは一大勢力であったということ。一月に書かれた手紙で彼は次のように言っている。―俺は俺の見たことを尋ねてみた、収容者を独房のなかで裸にして、あるいは女物の下着を着せ、手錠をドアにかませてほっておくなんてことを。俺の得た答えは、情報部が望んでいることだということだった―情報部はわれわれを励まし、「よくやったGreat Job」と言った。フレデリックは家族に次のようにも語っている。上官である中佐のJerry Phillabaumに収容者の虐待について尋ねたところ、彼の返事は「心配スンナ」というものだったと。要約というより訳している感覚になってきた。これ以上は次回ということにします。私はこの記事を読んで、アメリカのリベラリズムは死んでいないという感触を得た。マイケル・ムーアの新作などの上映拒否などが報じられているなかで、このような記事をTHE NEW YORKERが載せるということはやっぱりすごいと思う。実はこの記事もムーアのホームページで発見したものである。