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ポケットの中にいつも少女

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2009.06.21
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カテゴリ:小説


テディ・ベア作家攻がネックで一度クレバスに落ちかけた作品だそうですが、シャレードさんサルベージ刊行してくれて本当にありがとう…!!
花ちゃんのあとがきでのコメント「原点回帰」に納得。この本の作者は確かに私の惚れた花川戸菖蒲だ。尤書堂スキーは是非読むべき。

【あらすじ】
「広睦くんはパーフェクトだ」―手芸雑誌編集部のバイト・広睦は勤め先のパーティーで美形の作家・奥住と出会う。男性しか愛せない性癖と体つきが華奢すぎるという広睦のコンプレックスを、奥住は独特なテンポの会話と価値観でからめとっていく。体格以外は平均的な社会通念を備えた広睦は軽い困惑に陥りながらも、そんな奥住に魅了されてしまう。衣装としか言いようのない洋服のプレゼント、豪華な食事、Hに至っては紳士的な口調でねっとりたっぷり攻められて、周囲の不安をよそに誕生したカップルは甘い蜜月を過ごしているかに見えたのだが…。(裏表紙より)


ボディサイズはミニマムですが、器はデッカイ男前受・広睦くんと、一見王子様で実は大変残念な中身の攻(一般的なヘタレにあらず、登場人物曰く「ベアしか愛せない、頭おかしい」)ベア作家・奥住の純愛物語。
おそらく彼らは至って真面目なのでしょうが、そもそも奥住が滅多にない変態で、広睦くんも奥住のおかげで一見まともそうに見えますが結構ズレているので、コメディ調でどんどん読めちゃいます。
けれど単なるラブコメかと思わせつつ、物語の中にはちゃんと一本の筋が通っていて、作者からの強いメッセージを読み取ることができます。

あらすじでもまだ生ぬるい、上げ膳据え膳どころか、床に足も付けさせない(=移動は殆ど抱っこ!!)、冗談かと思うような広睦くんへの甘やかしっぷりは、読み進むにつれ明らかになる奥住の事情に、途中からむしろ切なくなってきます。
しかし、奥住の傷が分かってくる以前から、明らかにオカシな奥住を一つの個性として受け止めている広睦くんに、ガツンと来ました。
作中で奥住も語っていますが、トンデモ高級店ばかり連れて行く、金銭感覚も常識外の奥住と、自分の価値観との相違を認めた上で、なんの衒いもなく自分の好きな定食屋に招待する広睦くんは、一般的な社会通念を備えているというよりも、社会通念に照らし合わせた上で確固たる自分を持っている、と言った方が正しいような気がします。
人の決めたあやふやな基準ではなく、ちゃんと自分で選びとっているから、大事な所で惑うことがない。一見子供のような単純さに見えますが、つまりそれこそが広睦くんの強さであり、本当は私たちも持っていなければいけない、互いを一人の人間と認めた上で関わりながら生きていくための基礎だと思うのです。
このお話が、設定やキャラクターの特異さの中で意外な程浮ついた感じがせず、キャラクターたちも何度もすれ違っては、きちんと歩み寄って関係を作り上げていけるのも、そのためかもしれません。

などと堅苦しい感想を書いていますが、もちろん作品そのものはけして堅苦しいものではなく、むしろコスプレとか歯が浮くどころか飛びそうなセリフなどに、広睦くんと一緒に「無理、無理無理、無理!!」と叫びつつ楽しく振り回されているうちに読み終わっちゃいます。
単純に奥住の変態っぷりや、迷ったり悩んだりの可愛い広睦くんを愛でるのもアリアリ。
クマスキーの端くれとしては、作中にクマとかクマとかクマ雑貨が出てくるのも嬉しい♪
笑って泣いて、ドキドキして。元気になりたい方にお勧めです。

それにしても、どうして花ちゃんの書く攻は私のハートにジャストフィットなのでしょうか。いや、好きという意味ではなく、むしろ私の分身?「それは俺がやりたい!」という事をいろいろとやらかしてくれますね。主に寝室でですが(爆)
しかし、私のベストシーンは、数あるラブラブシーンを差し置いて、広睦くんの鼻血&頭突きです。特に頭突きシーンではうっかり浅海にトキメキました。津田×浅海ってどうですか。






どうでもいいことですが、基本寝室が読書場所である私、読み途中でベッドにこの本を置いて用を足して戻ってきたところ、一足早く寝に来た旦那が、「それを感じてるというんだ。覚えようね。」と帯を声に出して読み上げ、力尽きたように突っ伏してました…不幸な事故にゃりよ。







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最終更新日  2009.06.22 01:29:47
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