次のステージへ ~教務方針~
今年度より、今まで一貫して通してきた教育方針に、ひとつ、上乗せしたいと思っています。今までのウィルは、知識より意識。量より質。記憶より理解。を掲げ、徹底的に突き通してきました。その結果、私たちが目指す「本当の学力」を、身に付けさせることに(ある程度)成功したと思います。ほとんど宿題も出さずに、週に幾度か塾に来ているだけ、そう、ウィルのメンバーになるだけで点数が(ある程度)上がっていく、授業ではない、宿題でもない、演習量でもない、その場に流れる空気が、伝統がその子の意識を高めていくんだ、という僕らの仮説が正しかったことの証明でもあると思っています。また、そういった独特な教育方針が評価されていたからこそ、この短期間に多くの方々に支持していただけたのだとも思っています。しかし、毎年毎年研ぎ澄ましてきたこの方針、「いかに教えず、いかにやらせず、質を、考え方を育てる」を今後このまま追究しても、そろそろ限界が見えてきたのではないか。毎年、上がっていった平均偏差値が安定してきた、ということは、この方針がある意味完成した、成熟したことを意味するのではないか。そう思うに至りました。では、どうするのか。来期からは、「意識」が備わった生徒に対しては今まではあえて避けてきたこと、課してこなかったこと、「量」や「時間」をどんどん求めていこうと思います。この方向転換、決断したきっかけはある生徒の一言でした。その生徒は、ウィルの方針の下、意識も備わり、学び方も身につけ、みるみる伸びていました。傍から見れば、いわゆる「勉強していないのにあいつはできる」キャラ。そんな彼が中3になって、難関私立(付属校)を受けようかなと言い出したので、それに合わせて指導内容も少しずつレベルを上げていったのですが、なかなか取れるようになっていかない。。。合格者平均は超えても、貯金まで行かないのです。自学力が完全に身についていたので、単語も文法も完璧に備わっているのに。。。今までこのやり方でどんな生徒も伸びていったはずなのにどうして?結局、彼は途中でその付属校よりもいい高校を見つけたので、受験することを止めたのですが、僕の中では疑問が残りました。数ヶ月が過ぎ、入試も佳境に入る頃、突然、彼の英語力が急に伸び出しました。不思議に思った僕が、彼にその理由を聞いたところ、「どうしていいのか、先生の言うように試行錯誤していろいろ試してはみたんですが、原因がわからないので、とにかく量をこなしていったら、急に啓けたというか。。。」その時にピンときたのです。昔読んだ落合博満氏が書かれた本、『コーチング 言葉と信念の魔術』に、こんな一例が載っていました。落合が、横浜ベイスターズの臨時コーチに招かれ、まだ無名の若手だった多村を指導したときの話です。多村選手は、当時同じチームにいたローズ(白人の方)のバッティングフォームを真似していたそうです。しかし、落合から見てそのバッティングフォームはあまりに彼の体格に合わない。しかし、それをそのまま伝えて、彼に合うであろうバッティングフォームを伝授しても、おそらく彼は理解できないだろう。本人の感覚で理解しなければ、正しいことであっても効果はない。そう考えて、彼はそのフォームについては何も言わず、ただ多村選手にめちゃくちゃ素振りをさせまくったのだそうです。その数、なんと1500回。させまくって、させまくっていくにつれ、多村選手のフォームは自然と変わっていきます。疲れないように、自分の体格に合うフォームになっていくのだそうです。話を戻します。正しいプロセスで、一つ一つ理解を求めていく今までのウィルの方針は決して間違ってはいない。しかし、量をとにかくこなすことで「わかる」こともある、ということに気が付いたのです。もちろん、先の多村選手の例のように、一回一回の素振りをテキトーにせず、意味を持たせて行う、という「意識」が備わっていることは前提。そういった「意識」を持たずに量を課せられても、ただの苦役になるだけ、頭を使わずに処理して終わり。ほとんど記憶にも残らないでしょう。これがいわゆる「うちの子はやっているのに伸びない」ですね。これはしません。というか、させません。今までどおり、ウィルの特長である「知識よりもまずは意識」で、しっかり育てていきます。ウィルの教育方針の下、高い意識と学習の仕方を身に付けた生徒たちが、中3になって、膨大な量をこなしていくとどうなるのか。その答えは、11期生となる、今年の中3生の結果に現れるでしょう。