殿中でござるって言うてみ、て。
出会ってから四半世紀が過ぎたもりおゆみ(もどき)ちゃんが草刈正雄に激似ってことと、結局逆上がりが出来ないまま中高の6年間、器械体操部で青春を謳歌したけど本当はバドミントン部に入りたかったって事実はあまりにも有名な話だけど、そんな彼女と去年の仕事納めの日に生田神社西側ビル地下の大学の頃から行きつけにしているお店に飲みに行った時のこと、新しく入ったバーテンの子がどエラい男前のイワトビペンギンみたいやねってクリーム明太子パスタを蕎麦のようにズズ…と箸で啜りもって盛り上がってたら、Earth, Wind & Fire の『宇宙のファンタジー』がかかったので私ったら思わず氷の微笑の時のシャロン・ストーンのような足の組み替え方が出ちゃうほど気持ちがヒートアップ。一方彼女は、クリームソースでもちゃもちゃになった口をクリアーにするために ZIMA を一口こくりと飲み小さく「んま♪」と呟いたんだけど、急に思い出したように脇に置いてたショッピン(ショッキングピンク)の袋をむんずと鷲掴みし「今年も大変お世話になりました。来年も宜しくお願いしたいという気持ちを込めて私から贈り物です。受け取れ。」と、徐にそれを私に突き出して来たわけ。驚きと感動と愛しさと切なさと心強さが一挙に押し寄せてきて一瞬白目剥いた私なんだけど、すぐ正気に戻り今しがた点けたばかりの煙草を口に咥えたまま燻る煙に顔をしかめもって「なんだなんだ!?」と中を覗き込むと、黒ベースにピンクのラインがめっさ可愛いルームウェアが入ってて、そりゃもうペットショップの防音ガラスの向こう側から必死で自己アピールをしている生後60日のヨークシャーテリアのように瞳を潤ませて全力で喜びを表す私に「私とお揃い。それはMサイズ。私はLサイズ。」とメニューを上から順番に指で追いながら、そして次の注文が決まったのかパタンとそれを閉じ、ウッド製のテーブルについた片肘に顎を乗せ、カラになった ZIMA のボトルをモザイクなしだと完全アウトっつー感じで握りながら「私がLサイズでちょっと小さめだったから、keiko はMサイズで多分大丈夫。」と、軽く毒とも取れなくもないニュアンスの良質なジャブを出したんだけど、アンニュイに頬杖ついた状態で話したもんだから言葉を発するたびにそれに合わせてもっそ首から上がカクカクしたはったわ。その夜、早速彼女からの贈り物を着てみたんだけどアンタ、上はいいさ。最高さ。バッチグーよ。問題は下でやな、着終わった私の足元を見てダーリンがぽつりと「松の廊下を歩く吉良上野介みたいです。」って、もっそ嬉しそうに言わはったもんだから、もりおゆみ(もどき)ちゃんのジャブがその頃になってごっつ効いて来たんやわあ。参考資料