カテゴリ:若草読書会
昨日(27日)は若草読書会の新年会でありました。
昨年は若草読書会の公式行事としては、1月29日の新年会と4月1日の花見会の2回が開催されただけでありましたので、今回の新年会が久々の例会ということになりました。 昨年の新年会では凡鬼さんに講師をお願いしてヤカモチは万葉の話をせずに済んだのですが、その代わりということで、お花見会で万葉の話をさせられる羽目となりました。 もう長らく、新年会はヤカモチの万葉の話というのが恒例になっていたので、今年もその例にならいヤカモチによる山上憶良の話ということになりました。 (万葉講話・山上憶良のレジメ 全21頁) 今年の参加者は、凡鬼さん、恒郎女さん、めぐの郎女さん、小万知さん、槇麻呂さん、リチ女さん、偐山頭火さんとヤカモチの全8名。 常連の、景郎女さん、祥麻呂さん、和郎女さんは都合が悪くなり欠席でした。恒郎女さんのお嬢さんである、めぐの郎女さんは今回が初参加であります。 午前11時開会のところ、10分遅れの11時10分からの講話開始となり、予定よりこれも10分遅れの12時10分終了で、きっちり1時間のお話をさせていただいたことになる。 年表に基づき山上憶良の生涯を概観した上、彼の歌をいくつか取り上げ鑑賞することとしました。 先ず、貧窮問答歌を取り上げ、その他比較的有名な歌をいくつか鑑賞しましたが、それらの歌は下記の通りです。 ●貧窮問答歌 天地は 広しといへど 吾がためは 狭くやなりぬる 日月は 明しといへど 吾がためは 照りや給はぬ 人皆か 吾のみや然る わくらばに 人とはあるを 人並に 吾も作れるを 綿もなき 布肩衣の 海松のごと わわけさがれる かかふのみ 肩に打ち懸け 伏いほの 曲いほの内に 直土に 藁解き敷きて 父母は 枕の方に 妻子どもは 足の方に 囲みゐて 憂へ吟ひ かまどには 火気ふき立てず こしきには 蜘蛛の巣かきて 飯炊く 事も忘れて 奴延鳥の のどよひをるに いとのきて 短き物を 端きると いへるがごとく しもと取る 里長が声は 寝屋處まで 来立ち呼ばひぬ かくばかり 術無きものか 世間の道 (巻5-892) <風に交じって雨の降る夜、雨に交じって雪の降る夜は、どうしようもないほど寒くてたまらないので、焼き固めた堅い塩をちびちび食べては、湯に溶いた酒粕をすすりすすり、何度も咳き込み、びしびしと鼻汁を啜りながら、ろくに生えてもいない髭をかき撫でて、俺以外に人はあるまいと威張ってはみるものの、寒くてたまらないので、麻の夜具を引きかぶり、布製の丈の短い袖なしをあるだけ全部重ね着ても、なお寒い夜でさえあるのに、私よりも貧しい人の父母は飢え凍えているだろう、妻子たちは食べ物をせがんで泣いているだろう、こんな時はどのようにしてあなたは世を渡っているのだろうか。 天地は広いというが、私に対しては狭くなったのか、日月は明るいというが、私の為にはてってくださらないのか、人みながこうなのか、私だけこうなのか、たまたま人として生まれたのに、また人並みに生まれついたのに、綿もない粗末な肩衣の、海松(みる)のように裂けて垂れ下がったぼろ切れだけを肩に掛け、屋根を伏せ覆った庵の、傾いた庵の内に、地面直接に藁を解き敷いて、父母は私の枕元に、妻子たちは足の方に、互いに身を寄せ合って悲しみ呻き、竈(かまど)には煙も吹き立てず、甑(こしき)には蜘蛛が巣を掛け、飯を炊くことも忘れ、トラツグミのように細々と力ない声で呻吟している時に、とりわけ短い物を更に端を切り詰めるというかの如く、鞭を手にした里長の声は、寝床まで来てわめき立てる。こんなにもやるせないものであるのか世の中の道理というのは。> 反歌 ●日本挽歌1首(柩を挽く者が詠うという意の「挽歌」を日本語で詠ったもの) 大君の 遠の朝廷と しらぬひの 筑紫の国に 泣く子なす 慕ひ来まして 息だにも いまだ休めず 年月も いまだあらねば 心ゆも 思はぬ間に うちなびき 臥やしぬれ 言はむすべ せむすべ知らに 石木をも 問ひ放け知らず 家ならば かたちはあらむを 恨めしき 妹の命の 我をばも いかにせよとか にほ鳥の 二人並び居 語らひし 心そむきて 家離りいます(巻5-794)<大君の遠い政庁として、(しらぬひの)筑紫の国に(泣く子なす)慕ってやって来られ、息を整えるいとまさえ未だなく、年月もまだ経っていないのに、思いもかけず力なく横たわってしまったので、何と言ってよいのか、何をしてよいのか分からず、岩や木に問うてみても仕方がない。家に居たのなら、姿かたちはもとのままでいただろうに、恨めしいわが妻の君は、この私にどうせよと言うのか。カイツブリのように二人寄り添って語り合った、その約束にそむいて、家を離れていってしまわれる。> 反歌5首 家に行きて いかにか我がせむ 枕づく はしきよし かくのみからに 慕ひ来し 悔しかも かく知らませば あをによし 妹が見し 楝の花は 散りぬべし 大野山 霧立ちわたる 我が嘆く おきその風に 霧立ちわたる(巻5-799) ●瓜食めば 子等おもほゆ 栗食めば ましてしのはゆ いづくより 来たりしものぞ まなかひに もとな懸りて 安眠し寐さぬ(巻5-802) ●銀も 金も玉も 何せむに まされる宝 子に如かめやも(巻5-803) ●春されば まづ咲く宿の 梅の花 ●いざ子ども はやく日本へ 大伴の 御津の浜松 待ち恋ひぬらむ(巻1-63) ●憶良らは 今は罷らむ 子泣くらむ ●松浦佐用姫の歌 行く船を 振り留みかね いかばかり 恋しくありけむ 松浦佐用姫(巻5-875) ●秋の七種の花の歌 萩の花 尾花葛花 なでしこの花 女郎花 また藤袴 朝がほの花(巻8-1538) ●七夕の歌 彦星し 妻迎へ船 漕ぎ出らし 天の川原に 霧の立てるは(巻8-1527) ●士やも 空しかるべき 万代に 語り継ぐべき 名は立てずして(巻6-978) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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