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カテゴリ:過去 実家に戻ってから
刃物を持ち出した私は初めての入院から閉鎖病棟だった。
その後も入院する時はいつも閉鎖病棟。 だから開放病棟がどんなところか知らない。 閉鎖病棟はあらゆるところに鍵がかかっている。 窓には鉄格子がはまり、本当に閉ざされた空間だ。 唯一鍵がかかっていない所といえばトイレだけだ。 初めて入院した時、私は一日泣いて過ごした。 泣いて泣いて 次の日からはぼんやりぼんやりとして 三日目には新しい異質な環境に慣れてしまった。 食事は給食のように自分でトレーに乗せる。 自分の席があり、そこで食べる。 電話代は一日30円。 タバコは時間制。 畳部屋に8人が雑魚寝。当番制で掃除をする。 お風呂は週二回。 お菓子やノートは注文する。 届いた手紙は看護婦さんが危険物がないか中身を確認してから渡される。 閉鎖病棟の更に奥にある独房のような個室。 回診は夜寝る前。 嫌だったのは薬の時間。 みんなが看護婦さんの前に列を作る。 一人ずつ「あ~ん」してもらって飲む。 ちゃんと飲まない人がいるからだと聞いたが、どうしても耐えられなかった。 薬は手の上に乗せてくれるよう頼み込んだ。 それはもしかすると小さな私の自尊心だったのかもしれない。 鉄格子越しに見える外の景色は悲しいほどにきれいで 季節の移り変わりを告げていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2004年10月28日 10時16分28秒
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