成人式の日
成人式のお知らせは二通来た。当時住んでいた市からと故郷の中学校から。私は故郷で成人式を迎えることにした。前日から帰省していると祖母が赤飯を炊いてきた。うんざりだった。一人暮らしのアパートに帰りたくなった。でもそんな勇気はなかった。成人式当日髪のセットは父方の叔母が着付は母方の叔母がメークは母の知人がやりたいと言うのではしごして歩いた。私はただの着せ替え人形のように何も言わなかった。みんながそれぞれ好きなように彩っていった。父は同級生の家から頼まれたお寿司をずっと握っていた。近所のおばさんが父と私の写真を撮ってくれた。照れてしまったのか下を向いて寿司を握る父と緊張して固い表情の私がカウンターを隔てて写っていた。イイコだった私を知っている中学の同級生達に会うのが怖かった。式が終わった時男子に煙草をもらって吸った。彼は驚いた顔をしたが、すぐに笑顔で煙草をくれた。私が思っているほど私の変化に戸惑っている人はいなかった。自意識過剰だったなと肩の力が抜けた。成人式の日イイコちゃんだった学生時代の私にバイバイできた。