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カテゴリ:ちょっとなつかしのファンタジー
1997年世界幻想文学大賞受賞作。のわりには、表紙やタイトルが地味な感じ。
表紙はバベルの塔みたいな絵で、これはこれで良いのだけど、「部分」と書いてあるせいか、いま一歩。それに、たぶん物語とは無関係に描かれた絵を持ってきたようで、なかみと「風合い」が合っていない感じがします。 邦題は、原題“The Psysiognomy”(人相学、骨相学。本文中では観相学)だと地味なので、物語で探求されるお宝である「白い果実」にしたのでしょうけど、やっぱり地味かも。このところファンタジー系の派手な本がどんどん出版されているので・・・、しかし、この地味だけれど上品なセンスの良さが、国書刊行会らしいところでしょうか。 物語の方は、一人称で語る主人公が、品もなくセンスも最低です。観相学の権威ということですが、ヒトラーを思わせる狂気の独裁者の右腕。権柄ずくでえらそうで、インテリのくせに暴力的で、とにかく鼻持ちならない悪党。あまりに最低なのでその言動、独白すべてが滑稽なほど。もちろん、作者はこれでもかと誇張して悪人を描き出しているのです。 舞台は、独裁者の脳から生まれた水晶とサンゴの都市。独裁者が命じて造らせたというだけでなく、後半で彼の頭痛に連動して建物が爆発したりしています。 あるいは砂丘の中の硫黄採掘鉱、これも見張りの兵士の頭の内部とつながりがあるようです。 そのほか、美薬という名の麻薬、青い鉱石になってしまう鉱夫、〈旅人〉と呼ばれるミイラ。楽園、魔物、キメラ的な人造人間たち・・・、そのようなアイテムにいろどられた異世界で、最悪な主人公は、恋をし、すべてがそこから変わっていきます。 物語の後半は、改心した主人公の贖罪の道のりという感じで、読んでいる方はホッとする一方、前半の毒気がなくなって物足りない気もします。独裁者も、改心した主人公の視点で描かれると、一種のあわれさが目立ちはじめます。最後に都市が崩壊し自分もよれよれになっても、独裁者は生き方を変えることができません; 「・・・やらなくてはならないことがたくさんある。ゆうべまた夢を見て、素晴らしいビジョンを得たのだ」 ――ジェフリー・フォード『白い果実』山尾篤子ほか訳、独裁者ビロウのせりふ とりあえず悪夢のような独裁都市はなくなり、主人公もまともな性格の持ち主となって出直していますから、めでたしめでたしの結末です。しかし白い果実とはいったい何だったのか、頭脳と連動する空間にはどういう仕掛けがあるのか、謎がいっぱいです。 三部作の1冊目なので、まだまだ主人公の旅は続き、異世界は充実していきそうです。悪者のインパクトがなくなった主人公がちょっと魅力減な気もしますが、続きも読んでみたいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
March 6, 2014 10:32:25 PM
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