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カテゴリ:ちょっとなつかしのファンタジー
『みどりの妖婆』は、冬至からクリスマス(一年の変わりめ)にかけての雪の恐怖や魔法の対決を描いた『光の六つのしるし』の続編で、「闇の戦い」シリーズの第2巻。こんどは、海辺に舞台を移し、復活祭(冬から春への変わりめ)に起こる百鬼夜行が出てきます。
ヨーロッパに「緑の男Greenman」と呼ばれる精霊のモチーフがあり、ウェールズではこの精霊が冬の精霊に勝利して春を招くというグリーンマン・フェスティバルが開催されるそうです。日本でも節分で鬼を追い払ったりするのと、似ていますね。 この物語では男manではなく、緑の魔女(原題Greenwitch)の像なのですが、復活祭のころ、セイヨウサンザシ、ナナカマド、ハシバミなど魔法と関係の深い植物でつくられ、村の女性たちが願掛けをした後、海へ投げこまれ(奉納され)ます。捧げものを受け取るのは太古の海の女神ティーシス(ギリシャ神話のテテュス)。 いろいろな神話や物語で、海あるいは水は、一般の魔術が効かない領域、それらより古い原初的・野性的な力を持つ領域とされるようですが、このお話でも海の力は「荒魔術」と呼ばれます。有史以前、善悪という観念もまだないころの人類が大自然に感じていた畏怖そのもの。それは主人公の現代の子供たちにも、根源的な恐怖となって伝わってきます。 その憑かれた一夜のもろもろの幻影や物の怪や亡霊が、小さな海村が経てきたもろもろの世紀から抜け出して来たトリウィシックの過去の民が、時間の中の暗黒の一点に集中したのだった。 --スーザン・クーパー『みどりの妖婆』浅羽莢子訳 もともと「闇の戦い」シリーズは、アーサー王周辺を中心に歴史の中の善悪の戦いを軸に展開していくのですが、その中にこのような、「世の始まりより前からのもっと古い魔法」(C・S・ルイス「ナルニア」シリーズの言葉)が出てくるのは、興味深いです。 ストーリー的には、子供たちの視点からの善悪の対立や謎解きなども魅力的ですが、作者の描く本能的・根源的な恐怖感は、1作めにもおとらず真に迫ってすごいです。 ついでに、新装版でない古い方の表紙絵も、なかなかすごい迫力です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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