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テーマ:ジブリアニメ大集合♪(120)
カテゴリ:これぞ名作!
今年、30周年だそうです。スタジオジブリ第1作。さっそく1月からTVで放映されていました「天空の城ラピュタ」。私たちの世代には、衝撃的感動作「ナウシカ」のあと、その余韻をこわさない、期待を裏切らない◎な宮崎オリジナル作品でした。
いまや有名すぎてストーリーは紹介の必要がないと思いますが、ヒロインのシータもヒーローのパズーも、ほんとうにまっすぐで素直な少年少女で、だれもが感情移入でき、応援したくなります。そして海賊ドーラ一家の爽やかなカッコよさは、のちに「紅の豚」の空賊たちへと受け継がれるわけですね(空賊団の名前「マンマユート」は「ママ怖い/ママ助けて」の意味だそうで、ドーラと息子たちを彷彿とさせます)。 飛翔への憧れ、巨大で畏怖すべき樹々、無垢な少女と彼女を援助する少年、滅び去った文明の発見、など、「ラピュタ」には「ナウシカ」と共通するモチーフがたくさんあり、それらは作者の心の根底にあるイメージの発露なのか、繰り返し、丁寧に、いろどりを変え、何度も訴えかけてきます。 それから、過去の遺産を受け継ぐ王家の、分かれてしまった末裔が二人。ムスカは自分の欲望のためにラピュタ文明の復活をたくらみ、シータに協力を強います。学究的欲望が高じてラピュタの恐るべき破壊力と権力を求める危険な狂人(と言えましょう)になりはてる男性と、それらを退けようとする少女の好対照は、そう、「ルパン三世カリオストロの城」のカリオストロ伯爵とクラリスのパターンですね。 破壊と征服のいわゆる男性原理の権化であるムスカは、飛行石のペンダントの指す方位を軍用機内のコンパスで測定してラピュタにたどり着き、解読した古文書を片手に、王になろうとします。 シータは他人(ロボットでも、自分を捕らえた軍の人々でも)を思い、失われる/たものを悼み、海賊たちには食事を作ります。書かれたものではなく、口伝で呪文を、それも女系で受け継いでおり、つまり女性原理を表しています。彼女はまた、自分の目で方位を見定め、嵐の中で目視でラピュタを捜します--「山育ちで目はいいの」と言う彼女と、もとからメガネをかけていたうえ最後に「目が、目が!」と悲鳴をあげるムスカはこんなところでも対照的。 ところで、この作品で私が最も好きな映像は何と言ってもラピュタの周りをとりまく「竜の巣」と呼ばれる低気圧を突破する場面です。その名の通り、ひらめく複数の稲妻が竜の形をしているところ、ただただ凄いです。しかも、パズーのお父さんの幻が彼を導くと、何本もの垂直の稲妻が回廊のようになっている天空の道を凧がたどっていくのです。幻想的で、同時にその迫力は圧倒的! じつはこれとよく似たものが、ミヒャエル・エンデの『ジム・ボタンと13人の海賊』に出てきます。海賊たちの根城「アッテハナラナイ国」をとりまくハリケーン、空までとどく海水の竜巻です(『モモ』の挿話にも同種の「永遠の台風」が登場します)。竜巻に突入して抜け出すと、中心部(台風の目)の静かな晴れた空間に、外から隠され難攻不落の根城があるところも、ラピュタそっくり。 よく似たというと、この物語のクライマックスでシータとパズーが唱える「ほろびの呪文」も、C.S.ルイス「ナルニア国ものがたり」シリーズの『魔術師のおい』に出てくる「ほろびの言葉」を思い出させます。核爆弾のスイッチか何かのように、一言の呪文で、ラピュタもチャーンの都も滅び去りました(ルイスでは、唱えたのは最強最悪の魔女でしたが)。いのちをはぐくみ環境を作り上げるのには大変な時間と忍耐と労力が要りますが、こわすのはただ一瞬、ただ一言で足りてしまう。人類は進化の果てにその恐るべき破壊の力をすでに持ってしまっていると認識すべきだ・・・と、これらの「呪文」は教えてくれます。 人類の進化と言えば、生命が海から大地へ、大地から空へ、さらに宇宙のかなたへとあこがれを向け続けるありさまを、レイ・ブラッドベリは「初期の終わり」等でうたいあげましたが、大地から舞い上がり飛翔するすばらしさをうたいながらも、樹木を示すことで「大地から離れては生きていけない」と戒める宮崎監督。引退してしまわれましたが、今、すでに幕を開けている宇宙時代を、彼はどんなふうに観ているのかな、とふと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 23, 2016 01:37:11 AM
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