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テーマ:ファンタジー・児童文学(31)
カテゴリ:これぞ名作!
橋の上から「帰らずの沼」こと血洗いの池の静寂を堪能した(写真左)あと、池をめぐる小道をぐるぐる、あちこち歩き回ってみました。舗装されてはいませんが、あるていど整備されていて、木の枝や藪に邪魔されることなく歩けます。けれど季節がら、手の届くところに伸び放題の葛(クズ)のつるや、咲きなだれるアジサイ、斜面をうめつくすドクダミなどがあり、野性味あふれていました。
・・・やがて沼の南がわをくらくつつんでいる木立ちの影にはいりました。(写真右) まばゆい太陽の光になれていた先生には、一瞬、暗黒の世界におちこんだように感じられます。 ――舟崎克彦『ぽっぺん先生と帰らずの沼』より 以下、引用はすべてこの本 西南の、池のY字形の最奥は浅くなっていて、コイでしょうか、灰色の大きな魚がたくさん見え、中には背中を水上に出してまで泥の浅瀬をパシャパシャ泳ぎ回るものもいました。その小さな水音がまた、静けさの中に響きわたるのです。 日あたりのよい方へちかづくにつれて、水中はだんだんと明るさをまし、朽葉のうず高くつもっていた沼底はなめらかな泥にかわってゆきます。 「あれがきっとこの沼のヌシだ……!!」(写真左) と、先生のセリフを思わずつぶやきながら写真を撮りました。 それから、池を離れてさらに深い木立ちの中へと続く南の道は、物語では先生の研究室があったとされるあたりです(写真右)。カゲロウに変身した時、カワセミになった時、そしてイタチになった時も先生がたどった森の道です。 先生は研究室の横手に生えている大イチョウの下かげを息もたえだえにくぐりぬけると、沼の方へくだるほそぼそとした道にそってとびつづけます。 カゲロウだったとき、ひん死の体にムチうちながらくだってきた道を、先生はいきおいよく風をきりながら、さかのぼっていました。 大ケヤキ、大イチョウなど、当時から大木が生えていたことがうかがえますが、半世紀以上が過ぎた今や、2人がかりでも囲めないほどの太い幹、倒れるほどのけぞっても梢が遠い巨木が何本も何本もありました。一つ一つにちゃんと名札がかかっていて、ケヤキの他にシラカシが多く、マツもありました。 左手の分かれ道には芭蕉の句碑などもありました。さらに左先の「乃木館」「御榊檀」は、明治時代に学習院の院長をつとめた乃木希典の居室や庭だそうですが、ここはちょっと畏れ多い感じなのでちらっと見て写真は撮りませんでした。物語では「もともとは、学長の宿舎」「オサカキ台」という説明のもと、守衛さんの家としてイタチの先生がヒヨコを捕らえたりした所です。 さらに森の本道を南へ進むと厩舎と馬場がありますが、ここは見学できない、と西門で聞かされていましたので、一段低い所にある馬場を木の間隠れに垣間見て通り過ぎました。物語では先生が解き放った馬たちが、キャンパス内を大暴走するのですが、馬場に馬の姿は見えませんでした(残念!)。 そのかわり、毒を食べたイタチの先生があえぎながら横たわった野球グラウンドは見えました(写真左)。 このあと私は中央の建物群の方へ進み、古めかしくも立派な学舎をいくつもめぐって、中庭にぽつんと安置されたとがったオブジェのような物を発見。説明板を読みますと、これこそ、物語の地図で「ピラミッド教室」としるされた大きな中央教室の名残りだそうです。学習院のシンボル的なユニークな建物でしたが、2008年に取り壊され、とがったてっぺん部分だけがこうして展示されているのです(写真右)。 中央研究棟や北1号館などの建物群に囲まれた中庭には、先述の大ケヤキ、大イチョウ(写真左下)と呼べそうな巨木がきれいに保護されてあちこちに立っていました。 さらにイタチの先生が女学生をやり過ごした、旧図書館も趣がありました。 そしてついでに、ぽっぺん先生が年を召されたらこんなだろうか、と思うような風貌の人物を見かけたことを付け加えておきます。教官の方でしょうか、教務関係の方でしょうか、どなたかはわかりませんが、白髪に鼻髭、顎髭をたくわえ、黒縁の丸メガネ、白いシャツにサスペンダーつきの黒いズボンの紳士でした。さすが独活大学、いえ、学習院。なんだか感動してしまいました。 ここまで1時間ほど歩き回って、快晴だったのですっかり疲れましたが、最後にもう一度、帰らずの沼を見て行こうと思った私は、急いで食堂の南の小道から沼の東端へ出ました。すると目の前の小道を、銀灰色に光る太いヘビが一匹、するするするりと横切って行きました。最後にすごいのが見られた!と、振り返りながら、沼すなわち血洗いの池をあとにしました。 キャンパス見学できそうよ、池に行くなら虫除け必携、などと教えてくださった友人KさんとKさんのお知り合いのかた、ありがとうございました! ここに載せきれなかった写真もたくさんあるので、そのうち整理してどこかに格納しようと思っています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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