カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
下條アトムさん、川島なお美さん、吉田羊さんの3人劇。
中津留章仁(なかつる・あきひと)さんのシナリオが深い。 (川島なお美 評は、ブログ後半に) 舞台が明転すると、いきなり夫婦間の激しい口論。 日和(ひより:川島なお美)が九州ことばで切り込んでいる。 土のにおいがたちのぼる。 雑誌『テアトロ』5月号にシナリオが載っていて、そこをあとで見たら中津留章仁さんは大分県の出身だった。 熊本辯のようでちょっと違うし、長崎辯や鹿児島辯じゃないし……と思いながら見ていたが、そうだったか。 大分辯の妻に、夫の実明(さねあき:下條アトム)は東京ことばで応戦する。 これが「とんでもない女」と結婚した夫。 暗転から明転へ。 つぎの場では、女が気立てのいい田舎娘の紗邪香(さやか:吉田 羊)に入れ替わっている。 とんでもない妻・日和の失踪から5年が経ち、 しあわせな(しかしかすかな不安のこもった)同棲が進行している。 そこに突然、とびきりおしゃれな日和が東京ことばで舞い戻ってくる。 (もともと実明と出会ったときも銀座で働いていたのだけど。) そして日和は実明と暮らすというのだ。 紗邪香を追い出してくれと言う。 「離婚はしないわよ。そしたら私、家族がいなくなっちゃうもの」 とんでもない女なのだ。 地面を耕すと土が香りだすみたいに、その理由がだんだん解きほぐされてきて、おもいきり重いテーマにも突き当たるのだが、 不条理劇に逃げることなく、結末に近づくにつれてロジックがすっと貫かれ、 そして最後にオチをつけて薫りを立ち上らせている。 シナリオがいい。 (↓ 関連サイト) http://www.tomproject.com/peformance/tondemo.html 今回は演劇の天使がいらっしゃったのか、ぼくはなんと この両国の小劇場「ベニサン・ピット」の最前列のど真ん中から 川島なお美さんと視線を合わせるという、忘れられない夜となりました。 舞台のテンションから解けたカーテンコールの川島なお美さんはとても愛らしくて、 上手(かみて)へ引き上げてゆくときスカートをふりふりさせながら少しスキップするようすが少女のようでした。 失踪帰りの日和がお茶漬けを食べながら、実明のしぐさを見て吹出すシーンがあるのですがね(アドリブではなくシナリオにあります)、 川島なお美さん、ほんとに笑っていて(たぶん)、下條アトムさんの想定をこえて米粒飛びまくりで、 そのあとも舞台上の流し台のところでくっくっくと肩をふるわせている背中 かわいかったぁ。 失踪中の5年間アメリカと中国にいたという設定で、英語と北京語も披露してくれる。 (もともとのシナリオにはない、今回公演のための追加サービス)。 北京語は「我是川島直美。大家好。……」まではよく頑張っていましたが、そのあと乱れてしまって残念。 北京語らしく聞こえていたので、舞台としては ○ です。 前日に北千住でみた別の演劇が、演劇としては不完全燃焼だったのでよけいに、 ストレートプレイの魅力を再認識させてもらえてしあわせな夜でした。 下條アトム、吉田羊のお二人も、それぞれにいいテンションがあって、 この「気の張りつめ方の快感」が、つくづく、ストレートプレイの魔力です。 東京公演のあとは地方公演がつづきます。 ついてゆきたい気分……。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Apr 27, 2007 08:26:05 AM
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