カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
小劇場ちゅうの小劇場だ。40席に満たぬ客席の
「新宿ゴールデン街劇場」で 劇団「青果鹿(せいかしか)」の公演「めくるめく沈酔金魚」の初日を見てきました。 5月2日の夕べ。 白いシーツ。洗面器に泳ぐ2匹の金魚。 緋衣(ひごろも)を着て「熱い……」と身もだえる人物を配した、宣伝ビラのスチール写真。 じとっとした官能劇なのかしらん……。 (↓関連サイト) http://seikashika.web5.jp/main.htm 1匹10円のワキンと昼間のうちは見分けのつかないが、 夕刻のあるいっときだけ美しい紅色の光をはなつ伝説の沈酔金魚を捜し求める。 夢とうつつをドタバタ仕立てにした といえばいいでしょうか。 会場で配られる劇案内に刷られた制作者・澤藤 桂さんの一文の透明感に、劇の根っこのところに通じるものを感じたので、ちょっと引用します。 澤藤さんが岩手にいたころ、子供の頃のこと。 ≪ある朝、凍った金魚鉢の中で凍って固まっている金魚を見つけた私は、大慌てで父に報告しました。 父は驚くこともなく、ストーブにかけていた薬缶を手に取ると、金魚鉢の中に熱湯をドボドボ入れました。 すると、凍っていた金魚は再び元気に泳ぎだしたのです。≫ 生と死、夢とうつつを軽やかに往復してしまうかのような不思議な金魚。 劇のストーリーは凍った金魚とまったく関係がありませんが、この原体験がストーリーをつむがせたのだと思ってふりかえると何となく納得できる劇でした。 音楽は録音にたよらず、アコーディオンと木琴で哀感をおびた節回しを奏でていました。 演じたくて集った人々だから、舞台にみんな立たせることが至上命令だったのでしょうが、 わずか3畳ほどの小さな舞台に8人の役者を投入するのはさすがに無理がありました。 配役について。金魚売りの水槽から人間界へ跳びだす「キンギョ」の役は この劇団の今井由香利さんにやらせたらよかったんじゃないか。 今井由香利さんってこんなひと↓ 表情ゆたかで潜在力じゅうぶん。 http://www.raccophoto.com/imai/imai.html 彼女がこの劇団の華(はな)。 今回は「田園調布の令嬢・蘭子」を力強く演じていて、 おきゃんな中学生が輝いていました。 そうとうエネルギーをつかったのか、演じたあとの挨拶ではいっきにふつうの疲れたOLの顔に戻っていて、 ぎゃくにそれを見て彼女の演技力を知らされた思いです。 彼女が「キンギョ」をやっていれば、夢とうつつを行き惑う金魚にぼくも感情移入できたんじゃないかと思いました。 公演は5月9日まで。 ほんとはもう1回見てみて、 この小劇場空間がどう進化したかを確かめてみると面白いんじゃないかと思いますが。 初日はドタバタがすぎて、入り込みにくかったですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
May 6, 2007 05:57:42 PM
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