カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
8月4日昼の部、ようやく2度目の「レ・ミゼラブル」。
ジャヴェール警部役の岡幸二郎さんが、期待どおりの声の伸びで酔わせてくださった。 今 拓哉(こん・たくや)さんのジャヴェール役に感じられた「お節介者」の印象が消去されて、蒸留酒のようなジャヴェールだった。 ジャン・ヴァルジャン役の今井清隆さんもクラシックにこなしておられて文句のつけどころがないけれど、 ここに岡幸二郎さんのジャヴェールが対すると微妙に今井さんが負ける。 でもストーリーからすると、 テンションの高さゆえに人生を失うジャヴェールと、しぶとく生きるジャン・ヴァルジャンの組合せとは そもそもそういうもので、 まことに似つかわしい配役だったのだ。 駒田 一(こまだ・はじめ)さんのテナルディエを観るのは2度目。 すでにして20年もののお酒をいただいたような気分。 この酒場の主人の小悪党ぶり、なんとおいしい役だろう。 駒田さんの演じぶりがみごとで、別の役者さんの演技で観るのがこわくなりそうだ。 エポニーヌは前回、坂本真綾さんの舞台をみて大満足しつつ笹本玲奈さんの舞台を大脳裡で想像していたわけですが、 今回の、別の女優さんの舞台は残念ながらあたかもエポニーヌが単なる端役であるかのような印象を与える出来でした。 甲高い声だけがそそり立ってしまい、学生劇になってしまっていた。 女優さんの力の差が出た感じ。 今回はシルヴィア・グラブさんや岡幸二郎さんの絶唱のあとに客席から Bravo! をかます男性が約1名、 帝国劇場1階席の中央に陣取っていて、これには参りました。 たしかにオペラではアリアのあと Bravo! が客席のそこここから響くものですが (それはそれで想定内のものとして受け入れる準備ができているわけですが) 日本のミュージカル公演ではちょっとね……。 掛け声を掛けた本人は気分上々なのだろうが、想定外の他人の Bravo! を聞かされるわが脳内はびりびりになる。 カーテンコールでも、このひとは一人さかんに Bravo! していて、 その姿をようやく特定できたので、客席を出ながら近づいて声をかけました。 「あの~、すみません、 あの、まことに申し訳ありませんが、 カーテンコールで盛んに Bravo! しておられるのはいいんですが、 幕というか act のなかで たとえば岡さんの歌のあとで Bravo! やられちゃうと、 たぶんご本人はカタルシスというか 気分いいんだと思うんですが 周りにいる者からすると余韻が一気に冷める感じで、 率直にいって何と言うかガックリきちゃうんですよね……」 そしたら、幸いなことに相手のひとも大人でした。 「ああ、そうですか、おっしゃること、よく分かります。 これからちょっと気をつけなきゃいけませんね。 たぶん文化の違いもあるかなと思うんですが。 わたし、米国に十数年いましてね、米国ではああいうところで Bravo! を言うのはけっこう普通なんですよ。 役者さんへの励みにもなるので、入場料を払っている自分としては気持ちを伝えたいというところもあるのですが。 でも、おっしゃることも分かるので。 これからあと3回、レ・ミゼラブルを観ることにしてますから、 そのときにはちょっと考えます」 いわゆる「空気の読めない」バカものかと思っていましたが、 そのあともしばしにこやかに話を続けることができて、 今回の観劇の想定外のストレスは心地よく解消することができたのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Aug 4, 2007 09:52:52 PM
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