カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
平成14年にパリで9ヶ月のロングランだったミュージカル「星の王子さま」をほとんどそのままもってきたというゼイタクな舞台。
役者さんの4分の3がオリジナルキャストだという。 7月に上海で公演したあと劇団一行は台湾に飛び、台北国家戯劇院で8月4日から25日まで公演。 その23日夜の部の「小王子」を観た。 色彩豊かな絵画的舞台で、すべての瞬間がフレームをつければそのまま壁に飾れそうだ。 舞台のようすをビデオで観られるサイトがあったので、まずそれをご紹介しておこう。<!音声つきなのでご注意!> 星々の旅路から、専制君主の星、虚栄者の星、飲兵衛の星 http://www.uart.com.tw/video04.html おなじく、ビジネスマンの星、街灯点灯夫の星 http://www.uart.com.tw/video05.html 専制君主は悪魔とピエロを足して2で割ったような風情で剣玉をして憂さ晴らし。ミスマッチがいい。 虚栄のひとは、しなをつくるロック歌手。(これが台北の観客にはえらくうけていた。) ビジネスマンは電球大のガラス玉でできた巨大な算盤で計算にいそしむのだ。 戯画ではあるが、ちゃんと絵画になっている。 歌のメロディーはシャンソンのしっとり感に宇宙の透明感が加わっている。 役者さんはみなフランス人なのだけど、 蛇の役だけは、現代舞踊をたしなむ台湾人女性が頭からすっぽり黒装束になってオレンジ色の蛇人形をあやつった。 サンテグジュペリの原作にはないミュージカル・オリジナルの場面もあった。 王子さまが都会に行って、機械人間よろしく働きつづける鉄道員と「水を飲む時間が節約できる薬」を売る薬屋に遭遇するというもので、それはそれで成功していた。 (薬屋は客席に闖入して台湾語のアドリブで大いにうけていた。) 王子さまを演じた女性 Manon Taris さんは、中性的な演技に説得力があったし、 パイロット役の Laurent Ban 氏は声量豊かで、とくに王子の失踪を悲しむ「世界でいちばん美しくいちばん哀しい景色」という歌は、聴いていて体を電流が駆けた。 上海、台北のあと、東京まで来てほしかった舞台だ。 あるいは、ぜひ日本人の手で日本語版を実現してほしいと思った。 台北の公演はフランス語上演で、舞台左右に横書き字幕で上段がフランス語、下段が中国語の表示。 ぼくはほとんどフランス語のほうを見ていた。 日本の舞台ではふつう縦書き2行の字幕装置が使われることが多い。 台北国家戯劇院でも通常は縦書き字幕なのだけれど、今回の公演でフランス語の台詞や歌詞をフランス語字幕で追えたのはとても助かった。 台北の観客はなるほどノリはいいのだけど、相変わらず(!)私語が多くて始終どこかからヒソヒソ話が響いてくる感じ。 ほとんどわたし、天災と達観しかけております。 斜め後ろからの私語に振り向いて睨みつけると、70代くらいの爺さまが2人仲良く座っていたりして、まぁこういう観客は日本のミュージカルにはあまりいませんね。 == 脚本・演出: Jean-Louis Martinoty 作曲: Richard Cocciante 作詞: Elisabeth Anais 衣装: Jean-Charles de Castelbajac アジア公演監督: Bruno Carlucci 制作: Victor Bosch お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Aug 24, 2007 08:29:19 AM
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