カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
7月19日に渋谷のオーチャード・ホールへミュージカル「ヘアスプレー」公演を観に行ったら、ホールの中ほどを横切る通路に面した席に松本幸四郎さんが坐っておられた。
なにかご挨拶がしたかったのだけど、ことばが浮かばなかった。 帰宅してから 「こんどの『シェイクスピア・ソナタ』、楽しみにしてます」 とひとこと言って頭を下げたらどんなにかスマートだったろうと思った。 「シェイクスピア・ソナタ」、9月14日に観に行った。 舞台は北陸の造り酒屋の2階だ。 洋風の題名からは意表をつく「沙翁劇楽屋騒動顛末記」なのである。 造り酒屋の2階、日本家屋の広間が旅の一座のための臨時の楽屋として使われていて 一座の役者たちがシェークスピア4大悲劇の舞台から戻ってきては断片的な会話を重ねてゆく。 観る者は戸惑いながら言葉の端々から人間関係を割り出そうと試みる。 さしたる事件が起きたわけではないのに、観る者をいやおうなしに謎解きをせねばならぬという義務感に追い込むパワーのある劇だった。 ぎゃくに「事件」が起きるのは終末の十数分ほどなのだけど、これがどうも必然性に乏しい。 岩松 了(いわまつ・りょう)さんの台本は魅力たっぷりなのだけど、どうも終末の20分ほどは息切れがした感じだ。 いかにも無理して造った感じ。 会話の“切れ”が鈍って学生劇めいてきたなと思ったら「事件」が起きる。 最後のところで月並みな不条理劇に逃げた感じがして残念。 「事件」に必然性がないから感情移入ができず、最後の最後でドタバタ劇を見せられたような、やや不快な印象がのこってしまった。 むしろ、何も「事件」を起こさず人間関係の絡み・辛味がちらちらちらちらちらちらちらしたところで幕! というほうがよほど良かったのじゃなかろうか。 松本幸四郎、緒川たまき、伊藤 蘭の3人が舞台にいていただければ、はっきりいって最後まで何の筋書きがなくてもわたしは満足です。 とくにわたしはもう、緒川たまきさんの大ファンなのですね。 今年5月にケラリーノ・サンドロヴィッチさん構成・演出の 「犬は鎖につなぐべからず 岸田國士一幕劇コレクション」 の舞台ではじめて緒川たまきさんを観ました。 このかたは、その存在そのものが藝術です。 瞬間瞬間が浮世離れした感じ。それでいて薄っすら汗のにおいもする。 「清楚」が歩いているような感じなのに、客席から見えないからだの裏側のなんという色っぽさ。 封印をといて、数百年むかしのお姫さまを聞かせていただけるような、品のよい声。 お育てになったご両親に感謝せずにはいられません。 公演は渋谷の PARCO 劇場で9月26日まで。 (↓ 公演関連サイト) http://www.parco-play.com/web/play/shakespeare/top.html お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Sep 17, 2007 12:03:23 AM
コメント(0) | コメントを書く
[映画・演劇(とりわけミュージカル)評] カテゴリの最新記事
|
|