カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
毬谷友子さんの豊かな演技力をまた観たいと思い、27日の公演に行った。28日が千穐楽だった。
毬谷さんをはじめて観たのは、やはりこの両国のベニサンピットの舞台「薔薇の花束の秘密」だった↓ http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200702270000/ 今回の公演「スペインの芝居」は、音楽も効果音もないストレート・プレイの5人劇。 後述のように構成が入り組んでいることもあって、じつは恥ずかしながらついてゆくのがちょっとつらかった。 5人の仲がずたずたになっていった果てに、毬谷さんが劇中劇のピアノ教師としてメンデルスゾーンの前奏曲第5番をひく。 その旋律と音色が乾いてひびわれはじめた心にさらさらと清水となって流れてきて、劇がおわる。 長い舞台は、この瞬間のほっとした気持ちを味わうための手の込んだ仕掛けだった。 (↓「スペインの芝居」のサイト) http://www.tpt.co.jp/whatson/064_spain/ 劇場はいつもと違う鉄扉が入口になっていて、中に入るやあっと驚いた。 玄関ロビーの向こうに一段さがった演劇空間(文字通り「ピット」だ!)が広がり、向こうの壁を100席ばかりの見慣れた座席がおおっている。 観客は舞台の裏から入らせてもらい、舞台を横切って客席へ向かう。 ベニサンピットの舞台では、おりおり舞台の裏側からほんものの日光のような光がさすことがあって、じつに印象深い照明効果にうならされるのだが、その秘密は舞台裏のこの奥行きにあったのかと感動してしまった。 ふつう舞台というのは一段高いところにあるものだけど、今回の劇は最前列の観客の座席と同じ高さの床で主に演じられた。 そして「玄関ロビー」だったところも公演中は舞台奥の一段高い空間として機能した。 ときに役者さんは2階の手すり廊下、観客から見上げる位置にも登場した。 劇の最後にピアノをひくために毬谷さんが特訓したという話を新聞で読んでいたのだが、舞台空間にピアノはどこにもない。 そうしたら、最後にこれまたあっと驚いた。 毬谷さんがとんとんとんと客席中央の通路を上がってゆくのにあわせて、ぼくのすわっていたすぐ後ろのカーテンがさささと開いて、そこにピアノが現れた。 毬谷さんの流麗なメンデルスゾーン演奏ぶりを左後ろからすぐ近くで見上げることができた。 なんと、最後列こそ特等席だったのだ。 何度もいさかいあった他の4人の役者さんたちが、ひとり、またひとりと舞台にたたずむように立って、天上の天使となって演奏する毬谷さんをしずかに見上げるエンディングは心地よいものだった。 お芝居そのものの構成が、ちょっと入り組んでいる。 主旋律は5人の役者が殺伐としたスペインの家族を演じる「スペインの芝居」。 その内側に、ピアノ教師と教え子からなる劇中劇「ブルガリアの芝居」があって、 ぎゃくにその外側には、ひとりひとりの役者が架空インタビューをうけるという趣向で、それぞれの演劇論の独白がある。 奔流のようなことばのどれがストーリーの本流で、どれが支流で、どれが単なる飾りものか、判別しながら観なければついてゆけない戯曲で、観客側にチャレンジを強いている作品だ。 独白部分と(劇中)劇部分の演じわけがもうすこし明確になされていれば、効果的で分かりやすかったかもしれない。 そういうときは、美しい女性を見ているに限る。 月船さららさんがすてきだった。 ドレスの試着という趣向で、ふたつの林檎のようなゆたかな胸元をみせ左脚に深くスリットのはいった、赤とオレンジ色のドレス姿には、観客から軽いどよめきがあがった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Oct 30, 2007 08:04:47 AM
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