カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
日本オリジナルのミュージカル。
第2幕が絶品で、ブロードウェイのさまざまな技にさらに一味くわえて楽しませてくれた。 作品は「プロデューサーズ」のノリ。ほんの一瞬、メロディーまで引用されてましたね。 作り手は、真剣に戯れながら、しみじみしたところもしっかり造り込んだ。 公演2回目の週末、夜の部。 カーテンコールは幕が下りても拍手がやまず、ふたたび幕が上がると川平慈英(かびら・じえい)さんが「ありがとうございました」とさわやかに一礼してくださった。 人がいいけど経営感覚ゼロの牧師さまを演じる川平慈英さん。「ゴルフ・ザ・ミュージカル」でも見せてくれたリズミカルな一途さ。 流れ者のイカした男を演じる山路和弘(やまじ・かずひろ)さん。 遊びをダンディーに手のひらで転がす感覚は「マリー・アントワネット」のボーマルシェ役でも見せてくれた。 川平慈英さんと山路和弘さんに会いたくて天王洲銀河劇場へ行ったんだよ。 昭和44年、みちのくのとある漁村に教会があった。礼拝に訪れるのは息抜きのおしゃべり目当ての女4人衆(田中利花、高谷あゆみ、岡 千絵、山崎ちか・演)。 かつて教会が引き取った孤児が牧師の「弟」分だ(山崎育三郎・演)。生活を支えるのは、牧師と弟分が撈(と)って干物にする鯵(あじ)や鯖(さば)。 よれよれコートの男が闖入(ちんにゅう)する。何の拍子か財布のなかの唯一のお札、皺だらけの5千円札を献金してしまう。 不思議不可解なご利益(りやく)で、男は隣町の競馬で大儲けしはじめる。 まさに「信じる者と書いて儲(もう)かると読むのだ !!」 男は、村の女4人衆も競馬にさそう。それぞれに、みるみるリッチになってゆき、男のかなでるウクレレにあわせて讃美歌をうたい献金もはずみはじめる。 しかし牧師さまは「みんなが悔い改めたら返すべきカネだ」といって、手をつけない。 地代さえ払えぬ教会は、地主からパチンコ屋への転用を宣告されてしまう。 男がやってくる。「ロイヤルハレルヤ」という血筋のいい穴馬が、こんどの競馬で走るぞ。手をつけていない献金すべて、賭けたらどうだ。 ……そのあとのストーリーは想像どおりに展開するのだけれど、第2幕には舞台にいろいろ仕掛けがあって、意外性の連続で楽しませてくれた。 バニーガール風に4人の“ポニーガール”が床の穴から跳び出してくれたのはホントに痛快。 夢を描いたことの意味を確かめ合う結末も、いい味だった。 難をいえば、第1幕が間延びしすぎた。終わってみると、今のままの第1幕なら5~10分ていどに要約して第2幕冒頭にもってきてさえいいように思えた。 第2幕の女4人衆はフィクションらしいリッチに身を包んで華があった。 それにひきかえ第1幕の貧しい女4人衆はあまりに写実・現実に走りすぎ、台詞・歌詞も「ふざけるな」の連発をはじめちょっと聞き苦しかった。 第1幕の粗野な田舎女そのままのいでたちの女4人衆は地方公演ではウケるかもしれないが(実験の価値あり)、東京の客層からは共感を得にくく(舞台と客席に温度差あり)、ドタバタも空回りした。 ミュージカルというジャンルに仕立てるには、田舎女にもうちょっとスイートな茶目っ気がほしかった。 写実からどこまで離れるか、この匙加減はとっても難しいけど、再演でさらなるプロの技を見せてほしい。 教会の窓にゆらめく海波の影。 家具、天井、床、そして壁に、あっと驚く仕掛けの数々。 美術の二村周作(ふたむら・しゅうさく)さんの仕事に拍手。 第1幕を第2幕並みに高めたら、日本オリジナルミュージカルの古典になると思う。ブロードウェイでのリメイクもあるかも。 繰り返しになるが、再演が楽しみ! ↓「ハレルヤ!」オフィシャルブログ http://blog.e-get.jp/hareruya/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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