カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
劇場2階の左右に、ちょっと張り出すようにして設けられるボックス席。
天王洲の「銀河劇場」のボックス席など、舞台を眺めても死角はほとんどなく、特等席気分だ。 劇場の2階、3階が円形劇場風になっているので、ボックス席の位置が理想的なのだ。 こけらおとしの「ペテン師と詐欺師」では、劇中に市村正親さんがぼくのボックス席に来てくださり、そこから舞台に向ってセリフを言ってくださるという“大ホームラン”もあった。 しかし。 先週金曜に「ライト・イン・ザ・ピアッツァ」公演を観た「ル テアトル銀座」のボックス席の設計不備には仰天した。 ぼくが坐ったのは舞台に向って右側、前から2つめのボックスだったが、坐ると舞台の右側3割ほどが見えない。 ボックス席に2人が並ぶわけだけど、右隣の客が舞台全体を見ようとしてちょっと身を乗り出すと、ぼくは舞台の半分も見えない。 そもそも椅子が固定されておらず、打合せブースで使うような代物だ。 これでフルに11,000円の入場料を取るとはね。 ボックス席をもっと客席側へせり出させ、座席位置ももっと高くすべきなのだが。 で、ぼくはどうしたか。 仕方ないから坐ることをあきらめ、椅子は後ろに引き、手すりから2歩下がったところに立ち、横の壁にもたれて観劇することにした。全編立ち見を覚悟した。 これだと舞台の右側がわずかに切れるていどで、ほぼ全体が見渡せるし、左隣のボックス席にも迷惑をかけない。 理想の客として劇場から表彰されるかと思ったら、第1幕の中ほどでボックス席後ろの扉が開いて、係の女性が 「すみませんが、お座りください」 と、注意しに来られた。きっぱりと。 こちらは手すりから2歩も下がった位置にいたから全く危険はなかったし、誰にも迷惑はかけていなかった(同じボックスにいた隣の客も後でそう言ってくれた)。 しかし、遠目にはそんなことは分からないから危険な客と思われたのだろう。 ぼくを中途半端に真似した客が手すりにもたれて立ったりしたら大変なことになる。 恐縮して無言で係のひとに従って坐ったが、椅子を思い切り後ろに引いていたので、今度は舞台がほんの左端しか見えないという悲惨なことになった。 かといって、公演途中に椅子を前に引いたら騒音がする。忍の一字。 第1幕が終わったところで客席を見下ろしたら、最後列がまるまる空いていたので、第2幕はそちらへ席を移した。 ボックス席よりはるかにましだった。ようやく舞台を一望に収めることができたから。 「ル テアトル銀座」のボックス席。 席までの廊下は広く休息用のソファまで置かれ、ボックス席の客専用のトイレまである。 もともとは高級志向で作ったのに違いない。 その割には肝心の観劇には全く不向きで、ガールフレンドを誘ったら愛想尽かしを食らうだろう。 かといって、いまさら造作(ぞうさく)し直しはできまい。 ボックス席は半額料金とし、舞台の3割以上が死角になることを最初にことわるべきだ。 でなければ、ペテン師と詐欺師もはだしかな。 なお、「ル テアトル銀座」のふつうの客席のほうは、前かがみには坐れないように工夫され、かつ坐り心地のいい座席だ。 客層もよく、全体として感じのいい劇場だけに、ボックス席の失敗は惜しまれる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Dec 16, 2007 06:20:24 PM
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