カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
ひいきの藝人さん、香坂夏希(こうさか・なつき)さんが客演している。
テンポのいい展開。おもちゃ箱のように散らかった人間関係が最後にきれいに纏まってゆくのが気持ちいい。 三男坊のマンションに、ちゃらんぽらんの長男坊・次男坊が転がり込む。 あろうことか、長男坊・次男坊の女たちまで出没しはじめ、三男坊の女たちとニアミスが続く。 やがて純朴な四男坊が転がり込み、三男坊は「こいつを男にしてやろう」と画策をはじめる。 氷の女王よろしき「母親」役の足立紀子さんの、ブレない演技がいい。 ふがいない「父親」役の服部弘敏さんも、いい味を出していた。次々にかかってくる電話応対の一人芝居が絶妙。 作・演出・主演の金子 裕さんや四男坊の朽木正伸さんら、劇団虎のこ中核メンバーの躍動感もさることながら、 わたしはやはり足立紀子さんや服部弘敏さんのように「テンション張った叫び声」に頼らない、人をくった演技に惹かれます。 客演の人たちばかり褒めてすみません。 長男坊から四男坊までの4人の男に対して、若い女は5人。 さあ、椅子とりゲームからあぶれてしまうのは、誰? 意外な結末になります。そういう推理劇と思って見るのも面白いかもしれません。 登場しただけで舞台にダリアの花が咲く香坂夏希さんは、アンドロイド的な不思議のひと。 見つめただけでひとを奴隷にする眼ぢから。この存在感は天性のもので、今後もたのしみです。 根がきまじめな彼女、今回はコミカルなお色気に挑戦していました。工夫・苦労を重ねたと思います。 美しい香坂さんの華やぎシーンの劇中劇のようなウソっぽさ(それはそれで設定に合っていましたが)は、彼女に渋みや発酵香が希薄だからでしょうか。 ふつう舞台に立つ女性には陰(かげ)があるのですが、香坂さんには陰がない。そこが彼女のよさであり、同時にちょっともの足りないところでもあります。 普通にしゃべっても張りのある声、テンションのあるひとなので、お芝居ではむしろテンションを押し下げ気味に陰影に心を向けたら、ぞくっと一皮剥けるかも。 ミュージカルには娼婦役が頻繁に登場します。ひとりひとりの娼婦が伝説になる。 彼女にもいちど娼婦役を演じてもらいたいと前から思っていました。今回のお芝居は、娼婦役の入門篇だったかもしれません。 おなじプロダクションのフェザードから客演の荒井静香さんは、ほのぼのキャラと甘い声が光っていました。 公演は12月24日まで、赤坂の「シアターVアカサカ」で。 (↓ 関連サイト [音が出るので注意!]) http://otonatoranoko.com/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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