カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
イギリス人の優雅なペテン師(鹿賀丈史・演)とアメリカ人の気ままな詐欺師(市村正親・演)が互いをいたぶりあう奇妙な友情物語。
ネブラスカ州の有閑マダム(愛華みれ・演)、オクラハマ州の石油王の娘(香寿たつき・演)、オハイオ州の純朴なアメリカ人旅行者(ソニン・演)を次々に引っ掛けつつ、ペテン師と詐欺師はお互いへ勝負に打って出る……。 本邦初演はおととし10~11月@銀河劇場。 このときの感想を平成18年10月9日のブログに書いている。 今回は日生劇場での再演。 (↓ 音楽つきのサイト) http://hpot.jp/drs/ 第1幕が、優雅にまとめすぎた分、躍動感が落ちたような気がした。 第2幕になって急によくなったというか、花開いた感じ。 ソニンさん演じるオハイオ娘が、最後の真っ赤なじゃじゃ馬への変身ぶりは、ストーリーを知っていても度肝を抜かれた。 第2幕のノリのよさにすっかり満足して劇場を出たのだけど、一夜明けて考えると、やはり初演のほうが好きだ。 なぜでしょう。 アンサンブルの数も初演の「男9名、女6名」から今回は「男11名、女8名」に増え、ダンスも華麗になった。 舞台セットの作りも手が込んだ。 歌の訳詞も、日本語なのに効果的な脚韻を多用してみせ、一段と工夫が感じられた。 初演が「小劇場の公演」めいた雰囲気をたたえていたのに、再演では商業演劇然としていてミュージカルらしさの完成度は上がった。 今回は第1幕で、市村正親さんが客席側に下りて一列目の観客やオーケストラピットの指揮者に話しかける「あそび」も入れた。 それでも初演がよかったと思うのは、奥菜 恵さんと高田聖子さんがいたせいだ。 おふたりとも今回の再演では別の役者さんに替わってしまった。 奥菜さん演じるオハイオ娘は、奴隷になりますと志願したくなるほど愛らしくコケティッシュだった。 清純素朴な物腰とことばづかいなのに、コケティッシュさがにじみ出る。 もう、ぞくっとさせられ続けだった。 いっぽう今回再演の役者さんは、可憐がすぎて15、16歳の娘のよう。 若く見えすぎて、ストーリーとの違和感がぬぐえなかった。 高田聖子さん演じるオクラホマ娘は、ふしぎな陰を感じさせると同時に荒削りな力強さもあって、好演だった。 さすが劇団☆新感線の看板女優。 いっぽう今回再演の役者さんは元宝塚トップスターで、ミュージカルコメディーらしさはピカ一。 ただ、高田聖子さんの毒を知ってしまった身にはちょっと物足りなさが残った。 今回の演出は全体的に毒を薄めてコメディー色を強めた感じ。 愛華みれさんの有閑マダムなど、初演では哀愁をこめて歌うナンバーが印象深く、複雑なキャラクターだったのに、今回はコミカルなキャラに変わっていた。 今回の公演パンフレットで秀逸の市村正親評を元朝日新聞記者の扇田(せんだ)昭彦さんが書いている。 簡潔にして的を射た批評なので、引用させていただく。 ≪市村正親は標準型から外れたマイノリティーの人間に扮すると、異様なまでに濃い魅力を発揮するタイプの役者なのだ。 彼の演技のベースにはいつもユーモアの感覚があるが、その過剰なまでのサービス精神と愛嬌は、彼の心の中に潜む孤独感や寂寥感と結びついているように思われる。≫ 「ペテン師と詐欺師」 今回は、1月29日までの東京公演のあと、名古屋、広島、北九州、西宮を巡業公演する。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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