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カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
テレビCMで、ノラ・ジョーンズとジュード・ローがかわす、ゆっくりと心ゆくまでの口づけを何度もみて、映画の題名からしてメロウなラヴ・ストーリーなのだろうと
蜂蜜漬けにされてしまうのではないかと思いながら見はじめたら、 とんでもない。 塩漬けオリーヴ入りのドライ・マティーニだった。 ニューヨークのブロンクスあたりか、古びたダイナー(喫茶店兼食堂兼バー)の名はロシア語で“クリュチ”(=鍵)といった。 そこでてきぱきとパイやステーキを焼き、預かってくれと客に託されるいくつもの鍵のひとつひとつを持ち主の記憶とともにガラス瓶で守ってやるのが、ジェレミー。 演じるジュード・ローのイギリス英語がニューヨークとミスマッチだからキュートにひびく。 自分の恋人が、ここ“クリュチ”で女と食事したことを嗅ぎつけたエリザベスが、ジェレミーに 「どんな女だったか」 とたずねるところから話ははじまる。 演じるノラ・ジョーンズの目がいい。姿勢がいい。声がいい。 失恋した彼女がいっきにジェレミーとのラヴ・ストーリーに突入するのかと思ったら、そうではなくて、そうだな『星の王子さま』が小惑星遍歴をするような具合に、傷心のエリザベスはバスにのって旅にでる。 メンフィスに向かい、さらにネヴァダのとある町からラス・ヴェガスに流れる。 ロケに使われるダイナーがそれぞれに、さまざまな匂いのつまったアメリカなのだ。 じぶんを捨てた妻への執着にどろどろになった男。 男の執着がわずらわしくてたまらない薔薇の花のような女。 賭けポーカーの小悪魔。 映画のタッチはいかにも小プロダクションのマイナーな映画なのに、演じている俳優が一流どころだから、見ごたえがある。 やがて小惑星遍歴はおわるのだが、さいごのしっとりした盛り上げ方もうまい。 女はきっと、べたべたせずに温かく待ちうけてくれる男のなかに、ふっと自分を消してしまうのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Mar 28, 2008 08:24:15 AM
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