カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
「ベガーズ・オペラ」は去年DVDを買って第1幕を見たところで、どうも乗れなくて棚に戻したままになっていた。
DVDの編集が欲張りすぎて、ばらばらに展開する乞食役者たちの気まぐれをこま切れに場面転換しながら追っているものだから、実際の舞台の雰囲気を知らない者はなかなか興が乗らない。 笹本玲奈さんの蝶々の踊りについていけなかったのも一因だ。 3月15日の日生劇場は、前から2列目、舞台に向って右端の席だった。 単眼鏡を右手に、笹本玲奈さんの姿ばかり追っていた。 劇場は、見たいひとだけをとことん見ていられるからいい。 『シアター・ガイド』4月号が「ベガーズ・オペラ」を特集していて、笹本玲奈さん、森公美子(くみこ)さん、島田歌穂(かほ)さんの鼎談が載っている。 ≪笹本: 私、絶対に自分に振り向いてくれないような人が好きなんです。 島田: えー、そうなの? 笹本: 遊び人特有の色気みたいなものに、刺激されるんです。 森: 玲奈からそんな言葉が出るなんて!(笑) 島田: やっぱり、この2年の間に何かあったんだ~(笑) 笹本: (慌てて)いえ、経験ないですけど! 昨日読んだ小説にそんなふうなことが書いてあったんですよ(笑)。歌穂さんはどうですか? 島田: うまく振ったねぇ(笑)。≫ 舞台を見終わって、DVDも全部見終わって、あらためてこれを読むと、楽屋話と舞台の役者さんたちが不思議に重なり合っておもしろい。 「ベガーズ・オペラ」は作者 John Gay が享保13年(基督暦1728年)に発表したもの。 男もすなる日記といふものを女もしてみむとてするなり。 貴人もすなるオペラといふものを乞食もしてみむとてするなり。 そして生まれた世界初のミュージカル。 演出のジョン・ケアードさんは、日本の役者たちを指導するにあたって「まず18世紀の乞食になりきるところから始めろ」と時代背景で“洗脳”したうえで、18世紀の乞食たちに「乞食オペラ」をやらせた。 それぞれの役者さんがいったん乞食になってから劇中劇の役作りに取り組むという2段階を経ることで舞台に深みが加わった。 英国では英国人のためにどんな演出で公演しているのだろう。どんな楽器構成で、役者さんたちはどのていど“崩れて”いるのだろう。 ロンドンに行く機会があったら、ぜひ見てみたい。 日生劇場の舞台を体験してから見たDVDは、去年見たときと違って大きな満足を与えてくれた。 やはり舞台セットの位置関係が頭に入っていないと、場面転換の多いDVD画像にはなかなかついていけない。 舞台をご覧になれなかった方は、まず特典画像の「舞台セット潜入レポート」で劇場の三次元を脳内に再現してから本篇をご覧になるとよいかと思います。 今回の公演では森公美子さんの第3幕、ダイアナ・トレイプス役の化粧が2年前の公演と様変わり。 DVDで見る2年前の化粧は、黒い線で深い皺をかき「爬虫類ふう」だったのが、今回は顔一面を青白く塗り冥界から迷い出た凄まじさ。 なりきり度120%だった。ぺろぺろ…… つぎの公演ではどんな趣向があるのだろう。 何度でもやってほしい舞台だ。 (明日3月30日が千穐楽。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Mar 29, 2008 08:54:34 PM
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