カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
露人ウラジミール・マヤコフスキーの詩は
「斬新にみえるものは早く古びる」 ことを証明するためだけに存在する、というのが21世紀からみた ぼくの評価です。 ことばを新聞か雑誌の切り抜きのようにコラージュする。 ことばがチューブから搾り出したナマの絵の具のように作品に塗りたくられ、潤いを拒否しながら居坐る。 Мистерия-буфф 「ミステリア・ブッフ」 両国はベニサンピットの劇空間が モダンな白、透き通った硬質感で装われた。 今回の公演は、舞台美術(深瀬元喜)、照明(笠原俊幸)、衣装(萩野 緑)を先ず褒めたい。 舞台を両側から挟んで見下ろすかたちで客席がしつらえられ、中央奥には螺旋階段。役者はそこから上り下りして2階壁際の周回通路を行列する。 男優16名、女優11名の群集劇。しかもそれぞれの役者さんにかなり均等にセリフが割り当てられていて、にぎやかだ。 群衆劇でありながら、それぞれが露国の武器商人であったりエスキモー(イヌイット)であったり印度の女帝であったり、キャラが鮮明で、まるで『星の王子さま』が遍歴する小惑星の主たちが一堂に集まって収拾がつかなくなったかのようなカオスが展開する。 世界史のおさらいにはじまり、危難を逃れる方舟の旅は幽界から天上まで巡り、物質文明の現代をパロディーして終わる。 多彩な絵巻物のような構成を、白いビニールシートをうまくつかった舞台美術が支える。 マヤコフスキーの原作(大正7年作)を演出の木内宏昌さんが大幅に書き換えた台本。マヤコフスキーの註に、時代に合わせて脚色しつつ上演してほしいとあるのだと。 原作と比べて楽しむところまでゆけば、きっとこたえられない面白さなのだろうけど、木内宏昌作品を聴くかぎりにおいてはセリフに観念的単語が多すぎて感興が高まらなかった。 もう少し音楽や歌のちからを借りてもよかったのではないか。 (ぼくは、「歌う女」濱崎 茜さんにもっと いたぶられたい。 公演前にロビー脇で行われるパフォーマンスの、二十五絃筝を奏でる かりん さんと、揺れ謡う玉井夕海さんとは、いつかいっしょにイベントをしたい。) 手垢まみれの胡散臭いことばである「労働者」という単語が宙を舞うたびに感興が墜落する。 現代を加味するならいっそ、「労働者」を仮面ライダーの「戦闘員」に読み替えたほうが味わいは深まった……(笑)。 (公演は3月31日まで。観劇料 5,000円は安くて申し訳なし。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Mar 29, 2008 08:48:38 PM
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