カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
松本幸四郎さん主演の第1116回公演を見た。4月26日夜の部。
4月15日の昼の部が第1100回公演だった。 下の写真はそのときのカーテンコールのようす(東宝のサイトから)。 1100回の公演とはどういうことか。上演記録を見て、昭和44年のさいしょの公演の共演者の名にあっと驚いた。 ときに26歳の松本幸四郎さんは、襲名前の市川染五郎の名でドン・キホーテを演じた。 その憧憬する宿屋の女 「想い姫」 アルドンサ役が、草笛光子さん、浜木綿子さん、西尾恵美子さんのトリプル・キャストだった。 草笛さんらが演じたその役を平成14年から松たか子さんが演じている。 相方が草笛さんから松たか子さんへ一世代以上の交代をしながら、主役は同じひとが続けているとは、思っただけでぞくぞくする。 このミュージカルのドン・キホーテは、教会をおとしめたかどで牢に囚われた作家セルバンテスが劇中劇として演じるという趣向。 主演者がいかなる年齢でもその年齢なりに演じられる、すごい脚本だ。 だから松本幸四郎さんが26歳から65歳の今まで ひとつの役を極めてゆけた。 帝劇のロビーでロンドン公演の英語版のCDとメキシコ公演のスペイン語版のCDを買った。 (ロンドン版のオーケストラがすばらしい。) さきに松本幸四郎さんの入魂の舞台を見てしまったので、英語版の澄んでとどろく声さえ若すぎて聞こえる。 今回、舞台で再会してうれしかったのは駒田 一(はじめ)さん。コミカルな床屋役。 駒田さんは、最初にお会いしたのが「ダンス オブ ヴァンパイア」の異形(いぎょう)の せむし男姿 ; そのあと「レ・ミゼラブル」 で曲者(くせもの)のテナルディエ ; 「タン・ビエットの唄」でようやく素顔を見せていただいた役者さん。 「藝人」の一語がぴったりはまるひと。 さわやかなひと。 控えめにしておられても、しっかりファンを獲得しておられるのも納得だ。 牢名主(ろうなぬし)の役。 今回、上條恒彦(かみじょう・つねひこ)さんが予定されていながら、咽頭部にポリープがみつかり切除手術のために降板となった。 代わって演じられた瑳川哲朗(さがわ・てつろう)さんもよかったけれど、劇が進むにつれて、上條さんがこれを演じたらどんな遊びを入れて楽しませてくれるだろう、どんな渋さが出るだろう……と思いが飛んだ。 上條さん、はやくカムバックしてください! 今回の上演、何に惹かれたといって、ドン・キホーテが、あばずれの(でも美しい)女を 「想い姫」 として崇めるその姿。 すっかり自己移入してしまった。 「想い姫」の話としてセルバンテスの原作を読んでみようと思った。 松たか子さんを 「想い姫」 にできるなんて、観劇者はしあわせだ。 いろんな切り口で勇気をもらえるミュージカル。 だからだろう、これまで見たミュージカルのなかで、男性客、とくに年配のかたが多く見かけられた。 なにしろ帝劇で男性トイレに待ちの行列ができるのだから。 (帝国劇場で4月30日まで。まだ席は残っているようだ。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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