カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
CDを聴いてあらためてシルヴェスター・リーヴァイの世界、闇から歌い迫ってくるちからに酔ってしまった。
日本公演も、東宝作品らしくアンサンブルのひとりひとりに至るまできりっとしていた。 山口祐一郎さんというと 「魔」 の存在として舞台を睥睨していてほしい そんな思い込みがあるものだから、第1幕、普段着の貴公子としてごく普通の話劇がつづくと、まるで楽屋に戻ってうろうろしている山口祐一郎さんを見ているような変な気分だった。 早く、山口節を聞かせて……! という願いは、ようやく第2幕の前半でかなえられる。 「凍りつく微笑み」 ドイツ語原題は Kein Laecheln war je so kalt (かくも冷たい微笑みなど見たことがない)。 山口マキシムがストーリーのキモを歌いきるこのナンバーは圧巻。 音符のかたちをして駆けてゆく馬をあちらこちらへ自在にあやつって疾走する御者、山口祐一郎さんの喉以外に、この歌をのせることはできない。 メロディーに忠実なドイツ語版もいいが、山口節は何度も何度も聴きたい。おっと、公演は6月末まで続くぞ。 いまは亡きレベッカ・ド・ウィンターの冷たい嘲笑が意味する真相を知ったとき、マキシム・ド・ウィンターが再婚の相手として迎えた「わたし」の愛は、かぎりなく深くゆるぎないものとなる。 「愛しています」の言葉がこれほど、ぞくっとさせてくれるなんて。 ストーリーのちから、構成の力だ。 第1幕の圧巻は、シルビア・クラブさん演じる冷酷なダンヴァース夫人の 「何者にも負けない」 ドイツ語原題 Sie ergibt sich nicht (彼女=レベッカ=が身を垂れることはない)。 憑かれたような規律。地獄から立ち上ってくるような声。 鬼気迫るこの歌のために第1幕はある。 その対極にいる 「わたし」 を演じる大塚ちひろさんは、ぼくにとっては 「ダンス オブ ヴァンパイア」 でお風呂好きの娘サラを演じていただいて以来です。 そこにいてくださるだけで、しあわせです。 いつまでも応援しつづけます。 石川 禅さんは、執事のフランク・クローリー役。 細かいところまで神経の行き届いた石川 禅さんの所作を見ていると、第1幕のマキシム・ド・ウィンターは禅さんで見たかった……と発作的に思う。 どんな石川マキシムが展開しただろう……。 (でも第2幕の 「凍りつく微笑み」 だけは絶対に山口祐一郎さんの指定席だけどね!) 第2幕のもうひとつ見せ場のナンバーは、マキシム・ド・ウィンターのとんでもない敵役(かたきやく)、ジャック・ファヴェルが歌う 「持ちつ持たれつ」。 ドイツ語原題は Eine Hand waescht die andre Hand (手がもう一方の手を洗う)。 演ずるのは 「ダンス オブ ヴァンパイア」 でホモ吸血鬼のヘルベルトを歌い踊ってバカウケした吉野圭吾さん。 今回も藝がコミカルに炸裂。いいノリでした。まだまだ開花しそうで、こわいほど楽しみです。 応援してます! 上演が、奥行きがある割りに横幅が狭く天井も低いシアター・クリエで、音響レベルをあまり上げられなかった。 配役もストーリーも音楽も絶妙。進化が楽しみでぞくぞくするのだが、客席側の雑音がしきりに気になった。 帝劇や日生劇場のような懐のひろい劇場で大音響に包まれたい気もした。 第1幕の後半、1列後ろの太っちょのドイツ人の呼吸音が気になって集中できなかった。 ボックス席が空いていたので、幕間の休みのあいだに移動させてもらった。 シアター・クリエの係のかたの対応は好印象。さすが東宝さん。 問題のドイツ人は、俳優さんが招待したお客とのことだった。 Would it be possible to hold down your breath a little bit during the performance? とお願いしておいた。 I will try... と言っていたドイツ人だが、 さて第2幕の間、どうだったか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Apr 29, 2008 08:04:29 PM
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