カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
きのう19日のイベント準備のために劇場通いを3週間も我慢した。
イベント終了で観劇解禁となり、さっそく本上(ほんじょう)まなみさんと山本太郎さんの2人朗読劇 「LOVE LETTERS」 を観に行った。 最後の20分間は畳み掛けるような展開で、観に来てよかったという気にさせてくれたが、第1幕など、本上ファンのぼくにして退屈感から気を失いそうになった (つまり危うく眠りかけたということですが)。 演出の改良案を、このブログの後半に書く。 「LOVE LETTERS」 は、幼なじみの男と女が思春期から老年期のじつに50年間にわたり断続的に交換する手紙文だけからなる。 日々の雑然を書き記してそれとなく相手の気持ちを問いかける手紙。 熱い手紙。 短い手紙。 手紙を何通送っても返事が来ない、長いいっとき。 手紙を書いたアンディとメリッサ役が、それぞれ自分の手紙をひたすら読んでゆく舞台だ。 ◆ 興行ビジネスモデルとしては成功だが ◆ A.R. Gurney(ガーニー) が書いた原作は昭和63年に米国で初演。 日本語版は平成2年8月に渋谷のPARCO劇場で役所広司さんと大竹しのぶさんが演じたのが第1回。たった1日かぎり。 日替わりで、異なる藝人さんたちが演じてゆく。 舞台の上で椅子にすわって原作本を朗読してゆく。 セリフの暗記は不要で練習も短くて済むから、藝人の日替わりが成立する。 かくして、風吹ジュン・竹中直人のペアとか、ベッキーと柳家花緑(かろく) ペア、宮本信子・小椋 佳ペアといった有名人が1日限りの公演をする。 きょう7月20日は第354回公演で本上まなみ・山本太郎ペアだったが、 明日21日は、仁科亜季子・坂東彌十郎ペア、 7月29日は、神田沙也加・中川晃教ペアだ。 有名人の集客力で、きょうも774席のル テアトル銀座が8割がた埋まっていた。 有名藝人2人、音楽なし、舞台装置なし、5,000円の入場料で数百名を集客できるなら、安定したビジネスモデルとして成立する。 ◆ 演出の改良案 ◆ 藝人さんによって異なる演出なのかもしれないが、きょうの本上・山本組は、ふたりとも2時間のあいだずっと翻訳本 (=台本) に目を落としたまま読み上げてゆくだけだった。 目が客席を向くことも、隣の相方のほうを向くこともなく、したがって、演ずることによって発せられるはずの <気> は、台本の印面の上に吸収されてゆくだけだ。 せめて、ひとつの手紙の読みはじめと読みおわりに客席に視線を向けられなかったろうか。 相方が自分に宛てて書いた手紙を読み上げる間は、翻訳本から顔をあげて、その手紙に反応する心の動きを目線や口元で表現するとか。 そんなかたちで <気> の発散がもっとあればよかった。 あるいは別の趣向として、たとえばアンディがメリッサに宛てた手紙を受け手側のメリッサが読み上げつつその手紙への反応をも表現する、といったこともできる。 ほんらい、手紙を 「読む」 のは受け手なのだから。 受け手として読んでいるか、書き手として読んでいるかは、照明効果で表わしてみてはどうか。 「手紙を読む」という趣向なのに、手元にあるのが1冊の本だ、というのも演劇としてはいかがなものか。 手紙を1通ごとに別の紙にプリントして通し番号をつけておき、舞台上ではあたかも便箋を読むように次々と紙片をとっかえひっかえ読んでゆくという演出も面白いだろう。 第1幕で退屈しながら、部分的に「歌い読み」したらどうかな? などと考えていたが、そこまで冒険せずとも演出の工夫の余地は大いにあるということだ。 それと、有名人の集客力を武器にしているのだから、カーテンコールの挨拶をもっと充実させてほしい。 本上まなみ・山本太郎ペアは、カーテンコールでおどけたジェスチャーはしてみせたもののついに一言も発せず、その辺もちょっとがっかりだった。 (東京のル テアトル銀座で7月30日まで) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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